アインクラッド 前編
虚構から現実へ
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て疑問の視線を赤ローブへと投げかけていた。そして、その視線を察知したかのように、茅場が三度言葉を紡ぐ。
『諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は――SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか? これは大規模なテロなのか? あるいは身代金目的の誘拐事件なのか? と』
――違う。
抑えようがなくなったのか、言葉の端々から高揚感が漏れ出していた茅場のチュートリアルを聞きながら、マサキは茅場の目的を確信した。茅場が望んでいるのは、まさにこの状況であり、前に会ったときに見せた何かに対する狂的な渇望も、この世界の実現に向けたものだったのだろう。もちろん、それ以上の目的や目指す場所があるのかは分からない。だが、茅場の目的の第一段階はここで果たされたのだろう、と。
そのマサキの推測の答え合わせをするかのように赤ローブは言葉を続け、マサキの出した答えに丸をつけた後、チュートリアルの終了を宣言してローブを消した。広場は再びNPC楽団による演奏のみで彩られ――、
時に取り残されたように佇んでいたプレイヤーが、ようやく時間の流れに追いつき、これまたマサキの予想通りの反応を見せた。
絶叫や悲鳴、懇願などの人としての全ての感情が入り混じった叫びを、耳を塞いでガードしながら、マサキはこの世界で唯一関係のある二人に目をやった。するとマサキも驚いたことに、キリトは真剣な、それでいて少しだけ不安と恐怖に揺れる眼差しでマサキを見据えると、どこか魂の抜けたような表情を浮かべたクラインの腕を強引に引っ張り、マサキに歩み寄ってきた。
「マサキ、ちょっと来てくれ」
少しだけ震えた声でマサキにささやくと、ベンチから立ち上がるマサキの腕を掴み、まだ叫び続けている人の間を北西方向に駆け抜けた。そのまますぐ近くに停めてあった馬車の陰に飛び込むと、キリトはもう一度二人を見て、低く押し殺した声で言った。
「クライン、マサキ。俺はすぐにこの街を出て、次の村へ向かう。お前たちも一緒に来い」
「この街だといけない理由は?」
今までで一番真剣な顔でマサキが問うと、キリトはマサキに向き直り、さらに低い声で続ける。
「あいつの言葉が全部本当なら、これからこの世界で生き残っていくためには、ひたすら自分を強化しなきゃならない。そしてMMORPGってのはプレイヤー間のリソースの奪い合いなんだ。システムが供給する限られた金とアイテムと経験値を、より多く獲得した奴だけが強くなれる」
「同じことを考えた奴同士で奪い合いになる前に、狩場を先へ移すってことか」
マサキが納得したような声で言うと、キリトもゆっくりと頷いた。
「俺は、道も危険なポイントも全部知ってるから、レベル1の今でも安全に辿り着ける」
そこまで言ってから、キリト
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