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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
幕間:詩花、図らずの初陣に臨む事
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口の方へ顔を向け、戟を落して嘔吐を始めた。

「うえっ...お\\'お\\'お\\'\\'お\\'\\'...げぼぉぉっ...」
(はぁ...言わんこっちゃないな)

 仁ノ助は彼女の背を擦り、不快感の嘔吐を手助けする。べちゃべちゃと、吐瀉物が地に落ちる音が響く。

「さぁ、外に出よう。此処の空気は腐り切ってる」
「げほっ...かはっ...」

 嘔吐を終えた彼女はまるで白骨のような青褪めた表情をしている。詩花は振り返って仁ノ助を見ようとし、視界の端でむっくりと起き上がった人影に目を見開いた。  

「...っ!!仁ノ助、てきい\'\'ぃ\'\'!!」
「っ!?」

 仁ノ助は咄嗟に剣を胸の前に翳す。瞬間、袈裟懸けに入ってきた一刀が剣に防がれて、耳鳴りがするような高調子が響く。その凶刀を振るったのは、全身が穢れに穢れて痩せている、一人の賊徒であった。

「このっ...外道ぉぉっ!!!」

 自らが殺した死骸の群れに隠れるという卑怯を働く男に仁ノ助は怒り、男の体を剣ごしに押しやって壁をどんと打ち破った。転倒する両者に土煙が被さる。仁ノ助が立ち上がる頃には男は距離を取り、よれよれと舌を出して喘いでいた。

「肉...肉っ...げほっげほぉ...新鮮っ...」

 その手に握られたのは、刃毀れ血塗れの惨状を見せている一振りの刀。その方の餌食となった者達は今も尚、蛆に貪られている。

「賊。貴様の首領は何処だ?」
「てめぇのぉ、てめぉの肉を分けろ!そしたら教えてやるっ!!」

 理性の無い光が目に現れている。まともな会話は期待できそうに無い。仁ノ助は柄を握る力を更に込めて返事をする。

「ちっ。あぁ、渡してやるとも。だからさっさと教えろ」
「はっ!!俺達だよっ!!!!」

 律儀に言うや否や賊は斬りかかって来る。初動が諸見えの下段からの一刀であるが、思い出したように途中から速度を増して迫り来る。だが軌道自体は変わらない。仁ノ助は刃の届かぬ距離で待ち、過ぎた瞬間、その軌道をなぞるように男の胸部目掛け横薙ぎに斬りかかる。

(殺った!)
 
 確信の下に振るわれた一刀は、素早くとって返された男の一刀に防がれる。先の動きに相反する機敏な返しに仁ノ助が僅かに驚く。そして男は続けざま、血肉に飢えるように猛然と迫りかかった。
 闇雲に仁ノ助へと振られる刃。男の体力が飢餓で衰えているのか、尻切れ蜻蛉となって隙を晒すが、一方でが突拍子も無く妙にキレのある振りである。無軌道の刃はそれゆえに読みにくく、仁ノ助は警戒心から攻撃の手を僅かに躊躇していた。
 其の時、家屋からよれよれと詩花が出てくる。未だに青褪めた表情をしているそれを盗み見て賊は笑みを零し、仁ノ助と鍔迫り合いをしながら叫ぶ。

「李兄ぃ、今だぁ
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