第二章
[8]前話
二人で産婦人科に行って検査を受けた、しかし。
医師は二人にこう告げた。
「残念ですが」
「妊娠していないですか」
「はい、検査薬で陽性が出ましても」
医師は友希に沈痛な顔で答えた。
「それでもです」
「妊娠しているとはですね」
「確実には言えません」
「そうですか」
「整理が遅れていたのは」
医師はこのことも話した。
「やはりストレスでしょう」
「そこからくるものですか」
「そうでして」
それでというのだ。
「残念ですがお二人は」
「そうですか」
「やっぱり俺のせいですか」
駿は項垂れて言った、その顔はまるで天国から地獄に落ちた様であった。
「子種がなくて」
「それは言わないで下さい」
これが医師の返答だった。
「宜しいですね」
「そうですか」
「はい、どうか」
「わかりました」
「それで今回は」
医師はあらためて話した。
「そういうことで」
「わかりました」
夫婦で項垂れて応えた、そうしてだった。
二人は家に帰った、その後で。
駿は友希にこう言ったのだった。
「残念だな」
「ええ」
友希も項垂れて応えた。
「そうね」
「やっぱり俺にはな」
「だから言わないでね、お医者さんも言ったでしょ」
「そうか」
「子供がいなくても」
また夫に言うのだった。
「それだけじゃないでしょ」
「夫婦は」
「だからそのことは仕方ないとして」
「諦めてか」
「それでね」
子供は出来ない、いなくてもいいと達観してというのだ。
「やっていきましょう、また言うけれど子供だけがね」
「夫婦じゃないな」
「ええ、子供がいなくても幸せになれるでしょ」
「それはな、今だってな」
駿は友希に答えた。
「幸せだって思ってるよ」
「ならいいでしょ、私もそう思ってるし」
「それならか」
「こうしたことも、こうしたお家もあるって」
「そう割り切ってか」
「やっていきましょう」
「そうだな、じゃあこれからも一緒にな」
駿はここで笑顔になった、まだ幾分引き摺っている感じであるがそれでも笑顔になってそうして言った。
「暮らしていこうな」
「幸せにね」
「そうしていこうな」
二人で話した、そうしてだった。
二人は今回のことはこうしたこともあるということで結論を出してだった。
夫婦生活を続けた、その暮らしは二人が言うにはこれ以上はないまでに幸せなものだった。
陽性と出ても 完
2021・11・21
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