第2部
テドン
小さな教会
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によって滅ぼされ、訪れる方はほとんどいなくなってしまいました」
そう語るカリーナさんの表情には、悲しみが滲み出ている。
「先ほどテドンについて聞きたいことがあるとおっしゃいましたが、あの惨状をご覧になりましたか?」
「ああ。あれは人の手で滅ぼされた様子ではない。明らかに魔物による攻撃だ」
ユウリの言葉に、カリーナさんは大きく頷いた。
「ええ。ユウリさんの言うとおり、テドンは魔王が復活して間もない頃に、魔王軍に滅ぼされました」
はっきりとした口調でそう言われ、場の空気が一瞬静まり返る。
「じゃあ、俺たちが昨夜あの町で見た人間は、やはり幽霊なのか? 町の様子も全く違っていたし、そもそも俺たちのことを完全に無視していたのは、どういうことだ?」
ユウリの問いに、カリーナさんは逡巡しつつも、選ぶように言葉をつづけた。
「……幽霊には、違いありません。詳しくはわかりませんがおそらく、イグノー様と何か関係があるのかもしれません」
「イグノー? テドンでも聞いたが、そいつはいったい何者なんだ?」
「イグノー様は、かつて勇者サイモン様とともに魔王討伐を目指した仲間の一人です」
『!?』
勇者サイモンと言えば、ユウリのお父さんであるオルテガさんより前に魔王に挑んだもう一人の英雄であり、知名度で言えばオルテガさんと双璧を成すほどだ。と言っても私が生まれる前の出来事なので噂でしか聞いたことはないのだが。
「確かサイモンとその仲間は、ネクロゴンドで魔王の手下に返り討ちにされ、ほとんどがその後行方不明と聞いたはずだが」
ユウリの疑問に、私も心の中で頷いた。そう、世間ではそういう噂が流れている。
「ええ。サイモン様も含め、ほとんどの方は皆散り散りになって身を潜めました。彼らは魔王軍から逃れるために、仲間内でも居場所を決して悟られないよう必死で身を隠したのです」
「そんなに執拗に追ってくるのか、その魔王軍とやらは」
だが、カリーナさんは首を横に振った。
「いえ、おそらく奴らが狙っていたのは、サイモン様たちではなく、サイモン様たちが持っていたオーブだと思います」
「オーブ!?」
思わず大きな声を上げる私。まさかこんなところでオーブの話が聞けるとは思わなかった。
「ということは、イグノーもオーブを持っていたのか!?」
ユウリも心なしか強い口調で、カリーナさんに詰め寄る。
「はい。イグノー様は『グリーンオーブ』を持っていました。本当は誰にも教えてはならないと言っていましたが、私には特別に教えてくださったんです。けれど今思えば、自分がいつかこの世からいなくなることを見越して……私にオーブのことを伝えたのだと思います」
そういうと、カリーナさんはこらえきれずに言葉に詰まる。イグノーさんとの思い出を思い出したのか、目にうっすらと涙を
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