第2部
テドン
小さな教会
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は、とても人を襲うような魔物には見えなかった。
「俺は勇者のユウリだ。魔王を倒すために旅をしている。あんたがカリーナか?」
ユウリも私と同じように、危険ではないと判断したらしい。警戒心を解いたユウリは、いきなり自分が勇者であることを自ら明かした。
「え!? は、はい。私がカリーナですけど……」
それに対し、突然の訪問者に戸惑いつつも、すぐに答えるカリーナさん。町で聞いた噂どおり、町外れに住んでいる女性と言うのは彼女のことなのであろう。
「……すみません。あの、『勇者』と言うのは本当ですか?」
「一応世間一般にはそう呼ばれているな」
疑いの眼差しを向けていたカリーナさんは、ユウリの返答になぜか安堵したような表情をした。けれどそれきり口を開くことはなかったので、私は本題を切り出した。
「いきなりすいません。この近くにあるテドンという町について聞きたいことがあるんですけど、何か知っていますか?」
テドン、という名前にわずかに反応するカリーナさん。そして彼女は、伏し目がちに口を開いた。
「あなた方は、テドンから来たのですね。立ち話も何ですし、中に入ってお話ししましょう」
「い、いえ! お気遣いなく……」
「おそらく長話になると思います。それに、そちらの方が本当に『勇者』だというのなら、ぜひ私の話を聞いてもらいたいのです」
「……どういうことだ?」
「どうぞこちらへ」
ユウリの問いに、彼女は返事の代わりに中へと招き入れる仕草を見せる。私たちは顔を見合わせるが、ここで立っていても仕方ないので彼女に従うことにした。
中に入ると、玄関を隔てた奥の部屋には、小さな礼拝堂があった。さらにその礼拝堂の右側にも部屋があり、そこはキッチンとダイニングになっている。
当然私たち以外には誰もおらず、案内の途中でカリーナさんも、私たちのような旅人が訪れたのはここ何年かぶりだと話してくれた。
彼女は私たちをダイニングへと案内すると、ダイニングチェアに座るよう促した。そしてすぐにキッチンへと赴き、温かいお茶を用意すると言ってくれた。
部屋の中は暖炉があり、ずっと外にいた私たちの凍えた体をゆっくりと暖めてくれる。
ほどなくカリーナさんがお茶を運んできてくれた。テーブルに置かれた瞬間、さわやかな香りが鼻腔をくすぐる。カップを手にし、それを口の中に含んだ途端、まろやかな甘さと心地よい苦味が広がり、あっという間に疲れた心と体を癒してくれた。
? ? 一息ついたところで、お互い改めて自己紹介をした。私たちが話し終わると、今度はカリーナさんの番だ。
「私はカリーナと申します。見ての通り、もともとここは教会で、私もシスターとしてこの地の平和を祈り続けています。この家も、昔は巡礼者が訪れる場所でした。ですが魔王が復活し、周辺の町や村はほとんど魔物
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