049話 学園祭編 シホの精神の迷宮
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ながら進んでいく。
その道中でいくつも扉が発見されますが、それはおそらくシホ様の記憶の領域らしく扉には『memory of 衛宮士郎』と『memory of シホ・E・シュバインオーグ』などというネームプレートが掲げられているようだった。
「ここはもう知っているからいいとして……この調子なら他の部屋も順調にいきそうか?それにしても、シホと士郎の扉が別に分かれていたのは何か意味があるのか……?」
エヴァンジェリンがそう呟きますが、なんとなくわたくしはわかりました。
「おそらく、衛宮士郎として過ごした記憶はこの世界に来るまでのもので、シホ様として記憶を失い過ごしたことによって新たに生まれた人格が今のシホ様のものなのでしょうね」
「なんだ? つまり、シホはもう衛宮士郎の記憶を……いや、もう記録と言った方がいいか?それを持っているだけの別人格ということでいいのか?」
「それは心の機微で複雑なものなのでしょうが……その認識で合っているのではと……恐らくですが、シロウの扉を開けば中にはあのシホ様が発動した『無限の剣製』の世界が広がっているのかと……」
「あの剣だらけの世界か。ならば……」
そう言ってエヴァンジェリンはおもむろにシホ様の方の記憶を開けて中を覗いてしまいます。
わたくしもつい一緒に中を覗いてしまいましたが、そこに広がっていたのは……。
「なっ……『無限の剣製』とは違うというのか?」
「みたいですね……」
そこに広がっていた光景は恐らくですが、ナギ達とともに過ごした魔法世界の光景が再現されていました。
ですが、中はとても暗く一切の星も見えない真っ暗な空間の空に一つの黒い月?でしょうか?いや、黒い太陽?とにかく見ていて心がざわめくような……。
そしてそんな世界の中心にまるで石造りの玉座の上に無表情のシホ様がぽつんと座っていました。
わたくしはつい駆けだしそうになりましたが、止まる。
『誰……?』
シホ様の無機質なそんな声とともに明らかに警戒されているようで頭上に何本もの鎌が浮かび上がる。
しかもその鎌はエヴァンジェリンにとっても不吉の対象である不死狩りの鎌『ハルペー』でしたのです。
「…………どうやら防衛機能らしいが歓迎はされていないらしいな。私は少なくともあのシホのもとに行こうとすれば精神を殺されるのは分かり切った事実だ。悔しいが……」
「エヴァンジェリン……」
「少なくともシホの記憶を知っている我らが深追いしてもいいことはない。閉めようか」
「はい……」
それで扉を閉めようとします。
だけど、閉める際にシホ様は涙を流しながら一言。
『ごめん……』
と呟いたのです。
申し訳ございませんシホ様。シホ様のもとに踏み込めない不甲斐ない従者で……。
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