第四章
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「アラビア系の人は少ないのに」
「僕達アジア系よりもですね」
「だからね」
それでというのだ。
「まあジョークってことで」
「貼ったんですね」
「そういうことだよ、それに貼り紙の端にそれはないって書いておいたよ」
「そうでしたか」
「小さい文字でね」
「僕もそれは気付かなかったです」
これは実際にだった。
「そうだったんですね」
「だからね」
「ジョークだってですか」
「わかるよ、まあこんなことを真に受ける人もいないよ」
店長は笑って言った、だが。
ヤンが店に入るとだった。
眼鏡をかけた黒髪を真ん中で分けた太った眼鏡のジーンズとポロシャツの男が来て息を荒くさせて店に飛び込んできた。
そうしてだ、日本語訛りの英語で彼に聞いてきた。
「あの、お店の貼り紙なりが」
「はい、何でしょうか」
ヤンはまさかと思いつつ男に問うた。
「一体」
「ネクロノミコンを入荷したなりか」
男はヤンにさらに聞いてきた。
「そうなりか」
「ああ、あのことですね」
ヤンはそれはと返した、古本が幾つもの本棚に整然と並べられている静かな店の中でその男に言った。
「貼り紙の端を見て下さい」
「そこをなりか」
「はい、そうして下さい」
「承知したなり」
男は敬礼をしてだった。
一旦店の外に出て貼り紙の端を見た、そして店の中に戻って肩を落として言ってきた。
「その予定はないなりか」
「はい、そもそもです」
ヤンは男にさらに話した。
「ネクロノミコンは実在しませんし」
「そうなりか」
「あれがラグクラフトの作品に出て来るのはご存知ですね」
「我はファンタジーマニアなり」
このことからだ、彼は話した。
「それで今はアメリカで働いているなりが」
「そうでしたか」
「アメリカのファンタジーを学んでいるなり」
「それでラグクラフトもですか」
「大好物の一つなり」
自分の眼鏡に手を当てて話した。
「日本語訳の全集も持っているなりが」
「そうですか」
「そのおぞましくも魅力的な世界にほれ込んでいるなり」
「それでなのですね」
「ネクロノミコンがあるならなり」
「ですがラグクラフトの書いたものは全てです」
ヤンは男にこのことを話した。
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