鍾乳洞
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西洋の悪戯妖精と同じ名前を持つそれは、静かにハルトとさやかの顔を見比べる。
「へえ……君みたいな可愛い女の子が、あのファントムの正体だったんだね」
「……ソラ……」
ハルトは、無意識に警戒を示す。
ウィザーソードガンを向けるが、ソラは両手を上げていた。
「おおっと、ハルト君。今は止めようよ。見てよ、こんな神秘的なところで戦うの?」
ソラは鍾乳洞を仰ぎながら言った。
何万年もの時を経て地球が作り上げた芸術。
その空間による影響だろうか、ハルトもまたウィザーソードガンの銃口を下ろした。
一方、ソラの方は両手を後ろで組みながら、軽やかなステップでさやかへ寄って来た。
「聞いてたよ。君も人間なんだって? さやかちゃん……でいいんだよね?」
「うん。そういうアンタは、ソラっていうの?」
「そうだよ? フフフ……」
彼は口を抑えながらほほ笑む。
「よろしくね。さやかちゃん。……ハルト君、君が彼女と面識があるってことは、中々にミステリーだよね? 僕たち、仲良くなれそうだね。さやかちゃん」
「さやかちゃんから離れろッ!」
どんどんさやかへ近づくソラへ、ハルトはトリガーを引いた。
ウィザーソードガンの銃口は火を噴き、ソラの近くの鍾乳石を打ち砕く。
「うわっ! ひどいなあ、ハルト君。こういう地球の石って、ここまで作るのに何万年もかかっちゃうんでしょ?」
「黙れ!」
ハルトはウィザーソードガンをソードモードにして、ソラへ斬りかかる。
だが、視界が悪い上に足場もおぼつかない。光届かぬ場所では、ウィザーソードガンは天然の芸術を切り刻むだけで、決してソラに届くことはなかった。
「ほらほら。結局戦うの? 結構争い好きだよね、ハルト君」
手を叩きながら、ソラはハルトを挑発する。
さらに頭に血が上ったハルトは、いつものように体を回転させ、蹴り、そして剣を振るう。
その際、どんどんウィザーソードガンと蹴りが、鍾乳石を砕いていく。
果たしてハルトの周囲は、神秘がズタズタに引き裂かれていったが、すばしっこいソラには全く通じなかった。
その時。
「わぷっ!」
ハルトは、雰囲気を破る悲鳴を上げた。
全身を貫いた冷たいもの。
近くの地下水脈から湧き出た水が、突如としてハルトとソラを覆いかぶさったようだった。
「はいはい。ここではこの辺にしておこう」
手を叩きながら、ハルトとソラの間に立ち入るさやか。
「もういいでしょ? これ以上ここで戦ったって仕方ないよ」
さやかが言葉を紡ぐごとに、彼女の周囲を浮かび上がった地下水が漂っていく。
「へえ、嬉しいね……君、僕の味方をしてくれるんだ?」
「まさか。あたしの味方はどこにもい
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