第五章
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「お酒を飲まないと言えなくて御免ね」
「どうしたんですか?」
「うん、飲まないと勇気出なくて」
それでというのだった。
「どうしてもね」
「それで、ですか」
「今日このお店に来てもらったんだ」
「一緒にですか」
「そうなんだ」
「そうですか、それで何か」
「うん、小早川さんに言いたいことがあるんだ」
あい実の目をじっと見たまま言ってきた。
「今からね」
「その言われたいことは」
「僕と付き合ってくれるかな」
あい実の目から視線は外さない。
「よかったら」
「これからですか」
「うん、これからね」
まさにというのだ。
「そうしてくれるかな」
「それを言われますと」
あい実は思わず泣いた、その場で。
ぽろぽろと涙を流しつつだ、佐藤にこう返した。
「困るじゃないですか」
「嫌かな」
佐藤は泣いたあい実に困った顔になった。
「僕じゃ」
「嫌って私がですか」
「僕が泣く位嫌かな」
こう言うのだった。
「だったらもういいけれど」
「違います、そんなこと言われたら嬉しくて」
心から喜んで言うのだった。
「つい」
「それでなんだ」
「はい、お願いします」
これがあい実の返事だった。
「これから」
「うん、それじゃあね」
「よかったです」
あい実は今も泣いていた、そうしてだった。
佐藤の告白を受けた、だがもうあい実は泣くばかりで飲んで食べられるどころではなかった。ただひたすら嬉しかった。
その翌日だった、あい実は大学で友人達に居酒屋でのことを話した、すると彼女達はこう言ったのだった。
「よかったじゃない」
「好きな人に逆に告白されて」
「そうなってね」
「最高の展開じゃない」
「これからどうお付き合いしていくかだけれど」
「まずはよかったわね」
相手の告白があってというのだ。
「本当にね」
「こんないいことはないわよ」
「自分からは告白出来なかったけれど」
「それが出来てね」
「本当によかったわね」
「嘘みたいよ」
見ればあい実の目は赤い、昨日泣くばかりの嬉しさで眠れなかったのだ。その目で友人達に言うのだった。
「ずっと言えなくて困っていたのに」
「実は相手もってね」
「本当にこんなことがあるのね」
「私達も驚いてるわ」
「こんなことがあるなんて」
「夢みたいよ」
「店長さんいえ佐藤さんも告白するのが怖かったみたいだけれど」
彼の方もというのだ。
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