第三章
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「私もね」
「好きになってなのね」
「それでその好きな気持ちが日増しに高まって」
「それでなのね」
「今に至るのよね」
「そうなの」
実際にというのだ。
「それでもう日増しに。一緒にいるとそれにつれてね」
「好きになっていって」
「どんどん堪らなくなってるのよね」
「そうよね」
「そうなの」
実際にというのだ。
「そうなっていて、けれど」
「告白出来ない」
「その勇気が出ない」
「どうしても」
「私に勇気があったら」
あい実はそんな自分を怨めしく思った、そのうえでの言葉だった。
「言えるのに」
「辛いわね」
「そのことはね」
「どうしても」
「告白したくて。そしてお付き合いしたいのに」
佐藤、彼とというのだ。
「けれどね」
「それが出来ない」
「その気持ちわかるわ」
「私達もね」
「わかってくれて嬉しいけれど」
それでもとだ。あい実はさらに言った。
「私としては本当にね」
「勇気出してって言ってもね」
「その勇気を出すのが怖いのよね」
「若しもって思ったり」
「肝心の一言が出なかったりね」
「だからね」
それでというのだ。
「どうしても言えないの。言って断られたら」
「そう思うとよね」
「怖いわよね」
「もうそれだけで言えない」
「怖くて仕方なくて」
「だからせめて」
どうしてもというのだ。
「傍にいて」
「一緒に働きたい」
「そうしたいのね」
「これからも」
「そう思ってるのね」
「ええ、そうするわ」
こう言ってそうしてだった。
あい実は自分の想いを必死に隠してそのうえで佐藤と一緒に働いた、兎に角彼の傍にいるだけでも幸せだった。
だが今以上に幸せになりたい、そうも思いながら働いていた。そして働いている間じっと佐藤を見ているが。
ある日だ、あい実はその佐藤に言われた。
「今日僕達六時で終わりだね」
「そうですね」
「だからお仕事が終わったら」
その時にはというのだ。
「ちょっと居酒屋行かない?」
「居酒屋ですか」
「このお店近くにいい居酒屋も多いよね」
「あっ、らしいですね」
あまり居酒屋に行かないあい実は今一つ要領を得ない返事だった。
「何か」
「うん、それでね」
「その居酒屋にですか」
「行きたいけれどいいかな」
「私もですか」
あい実は佐藤に自分の想いが顔や仕草に出ない様に必死に気を使いながら問うた。
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