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渦巻く滄海 紅き空 【下】
五十三 招かれざる客
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包丁でナルを縛る触手を断ち切った再不斬に続き、ナルを救出したカカシがヤマトに目配せする。
カカシの合図を受け、ヤマトは木遁の術で角都の追撃を防ぐ。

腕を大木に変えたヤマトの隣に、ナルを救出したカカシが降り立った。
同じく、ナルを助けるのに一役買った再不斬が横目でヤマトを見遣る。
腕を大木にして伸ばすその術に彼は秘かに眼を細めた。


「流石意外性ナンバーワンだよ、お前は」
「褒めてんのか、けなしてんのか、ハッキリしてほしいってばよ…」


カカシの物言いにガックリと肩を落とすナル。
しかし心底悔しがっている様子に、カカシは思案顔を浮かべる。
ナルの術について補足したヤマトの説明に、カカシは更に思考を巡らせた。


「螺旋手裏剣と言っても、ゼロ距離で相手にぶつけないとダメなんです。だから影分身で陽動をかけるのが基本だったんですが…」
「…わざわざ危ない橋を渡る必要もない。全員で奴を叩くのも一つの手だが…」


いのとチョウジにはシカマルの援護へ向かってもらったので、この場に残っているのは、ナル・カカシ・ヤマト、そして再不斬。
四対一なのだから相手に遠慮して一対一で闘う必要もない。
そう続けようとしたカカシは、ナルの強い決意の込められた双眸を目にして、言葉の先を呑み込んだ。


「…確かに危ない橋ってのはわかってる。でも今、オレはその危ない橋をひとりで渡りたいんだってばよ」

ナルの宣言に、カカシは黙って耳を傾ける。


「向こうに辿り着けなきゃ、オレはいつまで経ってもガキのままだ…だから、」

瞳を閉ざす。
閉ざされた瞼の裏の闇。暗闇の中、一条の光の橋が自分の足元に伸びている。
その先にいる人影をナルは認めた。桜を木ノ葉隠れの里へ連れ帰ることができた一方、連れ戻せなかった相手。
赤く渦巻く写輪眼がナルを射抜く。


「────その橋を外すようなことはしないでくれ」


ナルの懇願も含まれた強い意志に、カカシは眩しげに眼を細める。
その隣で肩を竦めた再不斬がぽんっとカカシの肩を叩いた。

「本人がやる気になってんだ、尊重してやれよ」

過保護すぎるのも嫌われるぜ、と揶揄雑じりの再不斬の言葉に「うるさいな」と返してカカシはナルの決意を真正面から受け止めた。


「────行け、ナル」
「押忍!!」


カカシの許可が下り、気合と共にナルは額当てをしっかと結び直す。
再戦を挑むナルの気迫を感じ取って、角都は己の触手を更に広範囲に伸ばした。
遠距離タイプへ姿を変える。

「芸の無い奴だ。当たらなければ脅威ではないとまだわからんか」


そう嘲笑するものの、体型だけでなくチャクラも相当練り込んでいるその姿は明らかにナルの術を警戒しているのが窺える。
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