第三章
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「そうなってます」
「そうですか、変わりましたね」
恵美はとだ、加藤はしみじみとして言った。
「本当に」
「そう言う加藤君もね。高校時代と比べて」
「そうかな」
「何か風格ついた感じよ」
「そりゃ僕も結婚して会社では管理職になったしね」
加藤も今の自分の話をした。
「だからね」
「それなりになのね」
「人生色々あったし」
それでというのだ。
「風格もついたって言えば」
「そうなのね」
「そうだよ、じゃあちょっとお店の品物見せてね」
「そうしてね」
恵美は加藤に笑顔で応えた、そうしてだった。
彼が買うものを受け取ってレジで勘定もして渡した、それから閉店時間になると夫そしてアルバイトと共に閉店作業をしてだった。
家に帰って息子、夫によく似た彼との時間を過ごしてだった。
夜寝室でスマートフォンで昔の自分の画像を観た、そこでの彼女は。
如何にもなヤンキーでバイクにも乗っているしかなりやんちゃな感じだった、そんな昔の自分を見てだった。
恵美は一緒に部屋にいる夫に笑って言った。
「今からじゃ想像出来ないわね」
「高校時代の自分は」
「別人みたいよ」
「やんちゃでだね」
「ええ、本当にね」
こう夫に言うのだった。
「この頃の私を見ると」
「人間変わるからね」
「そうね、じゃあ今からね」
恵美はこう言ってだった、スマートフォンを置いて。
立ち上がり服を脱いだ、そして。
黒のティーバックのショーツとそれと同じ色のブラだけの姿になってベッドの上にいる夫の傍に来て囁いた。
「寝ましょう」
「今からね」
「ええ、今夜も一緒にね」
「そうしようね」
「あの時は下着は白だけでティーバックなんてね」
このデザインの下着はというのだ。
「絶対にね」
「穿かなかったね」
「そうだったけれどね」
それでもというのだ。
「今はね」
「穿くね」
「そこも変わったわね」
「そうだね、人は変わるね」
「何かとね」
こう言って自分から夫を抱き締めた、そのうえで彼のパジャマを脱がしていった。今の自分とかつての自分の両方を思いながら。
美人の過去 完
2021・10・24
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