第2部
テドン
テドンの真実
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「ユウリっ!! 」
眼前で倒れそうになるユウリをあわてて受け止めようとするが、そのまま意識を失ってしまったユウリの体は私の力では支えきることができず、折り重なるように二人とも床に倒れ込んでしまった。
「う…… 重い……。 ごめん、ユウリ。 今ベッドに運ぶからもうちょっとだけ頑張って! 」
倒れたユウリに覆い被さられ身動きが取れない私は、彼を無理矢理起こしながらなんとか這い出る。 そして彼の肩に手を回し、半ば引きずるように部屋へと入った。 そして、一つしかないベッドにユウリを静かに寝かせたあと、その横で地べたに座り込み一息ついた。
傍らのユウリに目をやれば、呼吸が荒く、額には脂汗も浮き出ている。 意識を失っているというのにとても苦しそうだ。
思えばカザーブにいたときから不調の兆しはあった気がする。 それに加え、アッサラームやイシスでの異常なまでの暑さと、バハラタでのカンダタとの戦闘、さらには船酔いだ。
おまけにここテドンはイシスとは真逆の気候であり、今は池に氷が張ってもおかしくない程の寒さである。 ここ数週間の寒暖の差が疲弊した体に追い討ちをかけ、それらの積み重ねの結果、ユウリの体はついに限界に達したのではないだろうか。 そう考えると、私たちは随分ユウリに無理をさせてきた気がする。
立ち上がり、ベッド以外になにもない部屋を見回しながら、私は板張りの床に再び腰を下ろした。 布団もユウリにかけてあげた一枚しかなく、床にそのまま寝るには冷たすぎる。野宿用の布も、船を出てすぐテドンに着く予定だったので用意していなかった。
下に行ってもう一枚布団をもらっていこうか。 けれど、さっきみたいに話が通じない可能性が高い。 それに何より、寒さと疲労であまり体を動かしたくない。
「……」
諦めて結わえていた髪をほどき、外套を布団代わりにして、少しは寝れるかもとおもむろに横になってみる。
うぅ、全然寝られない。 そもそも木の床で寝るなんて冷たいし痛すぎる。
いや、これも修行の一環だ。 心頭滅却すれば床もまた熱し。
そう心に暗示をかけ続けること数十分。 結局眠気がくることはなく、むしろ体の冷えで目が冴えてしまった。
もう、こうなったら仕方がない。 私は意を決してユウリが眠っているベッドに潜り込むことにした。 野宿のときなんかみんな一緒に雑魚寝だし、ここで凍死するくらいなら我慢してでも布団の中で寝た方がいい。 怒られたらユウリに平謝りしよう。
潜り込んでみると、布団の中はまるで天国のようだった。 この一枚があるかないかで、世界がこんなにも違うというのか。
間近にいるユウリを見ると、彼はよっぽど疲れていたのか、先ほどまで疲労で辛そうにしていた表情からは一変、穏やかな顔で寝息を立てている。 普段野宿してい
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