第2部
テドン
テドンの真実
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? 」
いきなり現実へと戻す言葉を放つユウリが指差したほうを見ると、むき出しの牢屋の中に、一人の白骨化した遺体が朽ちた状態で転がっていた。 それを見た瞬間、私は全身が総毛立つ。
「ひどい……」
やはり何度見ても見慣れることはなく、泣きそうになる。
隣にいたユウリが、ポツリと呟く。
「ここだけ被害が特にひどいのを見ると、この町を襲った奴らは、ここの牢屋にいた人物に心当たりがあったみたいだな」
「確かここには罪を犯した人が入っているって言ってたよね」
「ああ。イグノー、とか言ってたか。だが、ここまでされるほどの罪を犯した訳でもないはずだが」
そう、むしろこの中にいた人は、無実の罪を着せられて牢屋に入れられた、被害者だ。新婚夫婦の伝言といい、イグノーさんとは、一体何者なのだろう。
「いったい誰がこんなことをやったんだろう?」
改めてみると、目を背けたくなるようなひどい光景だ。もしこの場にいたらと思うと、ぞっとする。
「おそらく魔王軍だろう。 昨日誰かが言ってたが、この町はネクロゴンドに近いから、いつ魔王軍に攻め入られてもおかしくない。 おまけにこんな片田舎で、魔王軍に対抗するだけの力もない。 結果抵抗するすべもなくここまでの被害になってしまったんだろう」
ユウリは苦々しげに眺めた後、こんな状況でも傷一つない鉄格子に手を当てた。
「だが、建物の痛み具合から見て、少なくとも数年は経過しているな。 下手すればもっとか。 だから、夕べのうちにこんな状態になったのは明らかにおかしい」
「そんな……。 それじゃあ攻撃されたのはもっとずっと前ってこと? でも、昨日は建物とかだってこんなボロボロじゃなかったし、町の人だっていたよ? 」
私の疑問に、ユウリはこちらを見たあと言葉を続けるのを少しためらったが、やがて口を開いた。
「……あれはきっと幽霊だろう」
「え?! 」
その単語を聞いた瞬間、私は凍りついた。
「昨夜は体調のせいか、はっきりとはわからなかったが、今ならわかる。 あれは間違いなく霊の類だ」
けれど、なぜか腑に落ちないような顔をするユウリ。
「いや、正確には普通の霊とは少し違うな……。 魂がここに留まっていれば、生きている俺たちの声や姿に反応すると思うんだが……。 前にお前の師匠だかが出てきたときも、お前があそこにいたときに現れただろ」
カザーブでの出来事を思い出して、私はおそるおそる頷く。
「あの時は、今のお前を視認したから俺たちの前に現れたんだ。 だがこの町の奴らは、まるで当時の出来事をそのまま再現しているかのようだった。 何者かが意図して魂をこの地に縛り付けているような感じにも見える」
魂を縛り付ける? そう言われても、私にはピンと来ない。
「霊の意思など関係なく、誰かがこ
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