第2部
テドン
テドンの真実
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彼は周辺を丹念に見回している。なぜかここの周りだけ特に被害がひどく、立派に見えた石壁は無残にも壁ごと剥がれ落ち、中の牢屋がむき出しの状態になっている。 足元の地面にはあちこちに毒の沼地が広がっていて、一歩歩けば自身も毒に侵されてしまいそうだった。
私の足音に気づいたのか、ユウリはこちらを振り向いた。
「…… 起きたのか」
その声を聞くだけで、ほっとした。
夕べとは違い、すっかり顔色もよくなっているようだ。 ただ、起きたばかりなのか、いつにもましてテンションが低い。
「よかった。 元気になったみたいだね。 体調は大丈夫?」
私が矢継ぎ早に質問すると、一呼吸おいてからユウリは口を開いた。
「ああ。 おかげで随分楽になった」
「そっか。 なら良かったよ」
「……」
「……」
そう言うと、それきりお互い無言になった。 なんだろうこの気まずい沈黙。
「あの、ユウリ……」
「昨日は、ありがとな」
俯いたまま、ポツリと低い声で言い放つユウリ。 あまりにも小さい声だったので、危うく聞き逃すところだった。
「えっと、なんかお礼を言われるようなことしたっけ? 」
「俺が倒れたあと、部屋まで運んでくれただろ」
「ああ、別にお礼を言われるほどのことじゃないよ。 それより、夕べはあれからゆっくり休めた? 」
すると、ユウリはすぐさま顔を背けた。
「ああ。お前が隣で寝てくれたからな」
「っ!?」
そうだった。いくら寒かったとはいえ、彼と同じ布団で寝てしまったのだ。今すぐ謝らなければ!
「ごめんなさい!! あの、誤解しないでほしいんだけどね? 夕べはあんまりにも寒くて死にそうだったから仕方なく一緒のベッドに入ってしまったわけで、別に他意があったわけじゃないから! 」
すると、私の様子が変だったのか、興味深げに顔を上げた。
「他意って何だ? 」
「へ? えーと、あの、そのだから……」
「説明出来ないようなことなのか?」
ユウリの鋭い切り返しに、タジタジになる私。
しかし、そんな私の無様な姿を鼻で笑いながら、目の前の彼はこちらをじっと見ているではないか。
「お前みたいな鈍感女でも、人並みに恥ずかしがることがあるんだな」
「なっ……!? 」
まるで私の反応を楽しんでるかのような彼の様子に、かっと体が熱くなる。
「冗談だ。俺の方こそ、ベッドを独り占めしてしまってすまなかった」
「ううん、具合が悪かったんだからお互い様だよ。私の方こそ、勝手にベッドに入っちゃって、ごめんなさい」
「そうならざるを得ない状況だったんだろ。気にするな」
そう言ってくれたユウリだったが、心なしか顔が赤くなっていた気がした。
なんだか私まで照れてしまう。
「そんなことよりこれを見ろ。どう思う
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