第2部
テドン
テドンの真実
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の寒さに、目を開けるより先に意識が戻る。
何やら寝言を言っていたのだろうか。 何を言っていたのか全く記憶がない。
それよりも、ベッドの中にいるにもかかわらず、まるで真冬の雪原に居るような肌寒さは一体何なのだろう。
目をこすり、不承不承に目を開ける。
「っくしゅん!! 」
目覚めて早々、私は大きなくしゃみをした。 そして、自分の体が恐ろしいくらい冷たくなっていることに気づいた。
夢の中ではあんなに暖かくて気持ちよかったのに、どうしてこんなに寒いのだろう? 私は不思議に思い、体を起こした。
すると、宿屋の一室だったはずなのに、まるで砲弾でも打ち込まれたかのようなボロボロの壁。 天井には穴が空いており、寝ていたベッドは朽ち果てていて、今までこんなところで寝ていたのか不思議なぐらいの様相を呈していた。
「あれ……? ユウリは……? 」
ぐるりと見回すが、ユウリの姿はない。それどころか、辺りに人の気配すらしない。
不穏な空気を感じ、ベッドから降りて旅支度を整える。 かじかむ手で外套を羽織り、ほとんど形を成していない部屋の扉を開けた。
軋む床をそっと歩き、ドアすらない入り口を通り抜け、下へ降りる階段へと足を運ぶ。 階段には所々穴が空いており、 一歩踏み外すと落ちてしまうほどの危険を伴っていた。
こんな廃墟に人の姿などあるわけもなく、夕べあれだけ部屋のやり取りをしていた店の主人の姿など、影も形もなかった。
外に出ると、その変わりぶりは顕著だった。 何処を見渡しても廃墟が連なるばかり。 夕べのあの賑やかさは何処へいってしまったのだろうか。
とにかくまずはユウリを探そう。 きっとユウリもこの町の異変に気づいて辺りを探っているにちがいない。
「ユウリー!! 何処にいるのー!? 」
名前を叫びつつ、辺りを見回してみると、あちこちに瓦礫や朽ちた木々が散乱している。 民家はどれも原型を留めておらず、中には白骨化した遺体もあった。
地面には草一本生えるどころか、乾ききった土塊に埋まることのないヒビが無数に入っていた。 酷いところは障気にあてられたのか、腐敗が進みとても人が踏み入られそうにない。
見れば見るほど心が病みそうになるほどの惨状。 昨日話しかけた親子がいた場所には、その二人のものと思われる大小の白骨が無造作に転がっており、それを見た瞬間、涙が溢れだした。
こちらの問いかけには答えなかったけれど、この町の人は皆旅人だろうと温かい言葉を投げかけてくれた。 そんな人達がこんな凄惨な目に遭うなんて――。
探すこと数十分。 ユウリは町の外れにある牢屋の前にいた。 夕べ衛兵に呼び止められた(実際は違ったが)場所だ。
彼の姿が目に入った瞬間、不安定だった私の心に安堵が広がる。
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