第2部
テドン
テドンの真実
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ても常に気を張っているのか、しかめっ面した寝顔しか見たことがなかった私にとっては、彼のこんな無防備な姿をみるのは初めてだった。
私は視線を反対側の窓の外に移し、ナギやシーラ、ルカなど、今まで出会ってきたいろんな人のことを考えながら目を瞑る。 けれどいつもと違う空間に一人取り残された気がして、なかなか寝付けない。
再びユウリに向き直り、改めて眺める。 月明かりに照らされた彼の顔はいつもより穏やかに見えた。
よかった。さっきよりは随分顔色がいいみたいだ。
エマではないけれど、こうして見るとユウリが女性に騒がれるのはわかる気がする。 普段の性格さえ知らなければ、その整った容貌は見ているだけでドキドキしてしまうだろう。
それに、勇者という肩書きがなければ、彼はもっと素直に接してくれたのかもしれないし、私も今よりもっと仲良くなれたかもしれない。
手を少し伸ばせばすぐ触れられる距離にいるのに、彼との距離感はいまだに縮まらない。
けれど、ずっと彼と一緒に旅をして来たからか、彼が隣にいるだけで孤独感が薄らいでいく。 だから、ユウリには早く元気になって欲しい。いつもの毒舌が聞けないと、こんなにも不安になってしまうのだから。
やがて、体が暖かくなってきたからか、徐々に眠気が襲ってきた。
明日になったら、よくなってるといいな……。
うつらうつらとなりながらユウリの回復を願うも、だんだんと意識がなくなり、いつしか私は夢の世界へと旅立って行ったのだった。
ここは、どこだろう。
辺りを見回して、ここが自分が住んでいたカザーブの家だとわかる。
私は泣いていた。
小さな手で必死に涙を拭い続けるが、止めどなく流れ落ちていく。
どうして泣いているの?
それは、唯一の友達が急にいなくなってしまったから。
せめて、いなくなる前に一言お別れを言って欲しかった。 さよならもしないまま、こんな形でいなくなるなんて思いもしなかった。
ほんの短い間だけど、師匠の元で一緒に修行をしていた、私より少し年上の男の子。
病弱で気弱な彼は、なぜか不思議な雰囲気をまとっていた。
そう、どうとは言えないが、身近な人でいえば、ユウリのようだった。
だからだろうか。 ユウリといてから、時々彼のことを思い出す。
一度だけ、師匠やほかの人には内緒で、何かを見せてもらったことがあったっけ。
あれはなんだったかな……。 絶対に秘密にしてと言われてたんだった。
でももう、会うこともない。 彼は行き先も告げぬまま、行方が分からなくなってしまった。 師匠や道場の仲間に聞いても、誰も教えてくれなかった。
今はどこにいるんだろう、ルーク……。
「……く……」
あまり
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