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ハイパーインフレの恐怖
第一章
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                ハイパーインフレの恐怖
 金田虎雄は手広く事業を展開している、若くして起業してからその商才と先を見る目を活かして三十になる頃には日本の高額納税者のランキングに載る程になった。
 人は彼を若き経営のカリスマと呼んだ、だが彼は。 
 蓄えた資本を現金のまましなかった、自分の資産はすぐにだ。
 自分が使う分以外は土地にし金塊そして宝石にしていった、それを見て彼の秘書である小坂真理子は尋ねた。
「社長は現金はお嫌いですか?」
「いや、好きだよ」
 金田は小坂に即座に答えた、眼鏡をかけて細面できりっとした理知的な顔立ちだ。赤がかった黒髪を右に分けてセットし一七四程の背で最高級のスーツがよく似合っている。
「ビジネスが好きでね」
「それによって収益を得ることもですね」
「大好きだよ、その証としてね」
「現金もですね」
「好きだよ」
「ですが」
「資産をだね」
「すぐに換えられますね」 
 その好きだという現金からとだ、小坂は言った。黒髪をロングにしていて縁の細い眼鏡をかけている。黒のロングヘアと切れ長の知的な目と小さな唇、卵形の顔と一六六程の背で見事なスタイルがズボンタイプのグレーのスーツに似合っている。
「土地や宝石に」
「そして金塊に」
「そうされていますね」
「常にね」
「ご自身が使われる分以外は」
「そうしてね」
 そしてというのだ。
「金庫に保管しているよ」
「ご自宅の」
「家族にもそう話しているよ」
「株にもされないですね」
「株もね」
 これはというのだ。
「あまりね」
「よくないですか」
「株は価値が上下するからね」
「だからですね」
「必要以上はね」
「持たれないですか」
「そう、そしてね」
 それでというのだ。
「株もね」
「あまりですか」
「持たないよ」
「そうですか」
「そしてね」
 彼はさらに言った。
「資産も出来るだけね」
「土地等にですね」
「する様にしているよ」
「それはどうしてでしょうか」
 小坂はあらためて問うた、今二人は金田が経営しているグループの本社のビルの会長室で話をしている。彼はグループ全体を統括しているので社長ではないのだ。
「一体」
「怖いからだよ」
 金田は小坂に冷静な顔と声で答えた。
「だからだよ」
「怖い、ですか」
「インフレがね」
 それがというのだ。
「だからだよ」
「インフレですか」
「それもハイパーインフレがね」
「ああ、あのインフレですね」 
 ハイパーインフレと聞いてだ、小坂も頷いた。
「あれは確かに」
「怖いね」
「はい、とても」
 金田にクールだが真剣な顔で答えた。
「なってしまうと」
「そうだね」
「ジンバブエがそうですね」
「とんで
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