第一章
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家ではべたべた
橋本由紀は会社では敏腕で知られている、背は一六〇程で大きなはっきりした目で波立つ黒髪を後ろで束ね唇は小さく薄紅色だ。色白でやや面長で顎の先が尖っていてグラドル並のスタイルをいつもタイトスカートのスーツで覆っている。
性格は真面目で自分にも他人にも厳しく妥協しない、それで仕事は出来てもだった。
「橋本先輩厳しいわよね」
「もう鬼軍曹って感じよね」
「折角奇麗なのにね」
「スタイルもいいのに」
「もう仕事一筋って人だから」
「近寄り難いのよね」
「どうしてもね」
後輩のＯＬ達はこう言っていた、そして。
同期入社で由紀と親しい浜名元は彼女によく言っていた。
「橋本、お前厳し過ぎるんだよ」
「またその話？」
由紀は浜名のその黒髪をセットした面長の顔を観つつ応えた。スーツの着方はやや砕けていて目は明るい。
「だからお仕事でしょ」
「それならか」
「そう、もうね」
同期の集まりで居酒屋にいる時に答えた。
「一切よ」
「妥協なんてなくか」
「完璧にしないと」
こう言うのだった。
「駄目でしょ」
「それでも厳し過ぎるんだよ、だから後輩の子達もな」
男女問わずとだ、浜名はビールを飲みながら返した。
「お前を敬遠してるんだよ」
「それはわかってるわ」
「わかってるならなおせよ」
浜名は正座して日本酒を少しずつ飲む由紀にさらに言った。
「嫌われなくないだろ」
「嫌われてもいいわ」
「いいのかよ」
「だからお仕事よ」
それならというのだ。
「もうね」
「嫌われてもか」
「ちゃんとお仕事が出来たら」
それならというのだ。
「それでいいわね」
「そうか？仕事するにもな」
浜名は由紀に首を傾げさせつつ言った。
「やっぱりな」
「好かれた方がいいの」
「そうだよ、俺はそうだけれどな」
「じゃあ私は違うわ」
これが由紀の反論だった。
「お仕事ならね」
「嫌われてもか」
「いいわ」
「それがお前の考えか、全く真面目にしてもな」
「過ぎるっていうのね」
「そりゃ仕事はちゃんとやるしな」
それにというのだ。
「肩癖だからな」
「じゃあいいわね」
「まあな、後輩の子に意地悪もしないしな」
「そんなこと嫌いだから」
「けれど本当にな」
そのあまりもの厳格さと妥協のなさはというのだ。
「機械みたいでな」
「面白味がないのね」
「人間味も感じないな」
「だからそういうのはいらないから」
「いいのかよ、綾波さんや星野さんみたいでも」
「星野さんはアニメの方ね」
「ツインテールのな、しかしな」
また言うのだった。
「本当に厳し過ぎるな」
「何度も言うけれどお仕事だから」
「やれやれだな」
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