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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者
第六一話 わかりあえない気持ち
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月明かりに照らされた、広大な砂漠。
シグナムはその空を駆けめぐっていた。
眼下には、穏やかな波のような砂の造形が広がっている。
淡い月光に映し出された自然の芸術。目を奪われてもおかしくはないが、彼女は眼光鋭く周囲を伺っている。
「魔力反応も、目視で確認できる物もないか。この世界にはいないのか?」
そう呟いた時だった。機動六課からの通信が入る。
「シグナムさん、シャリオです。その世界にアスカがいる可能性は限りなく低い事が分かりました。魔力反応が皆無なんです」
その知らせは、シグナムを落胆させるのには充分だった。
「そうか……では、次の世界に跳躍する。データを送ってくれ」
「何を言ってるんですか!もう帰ってきてください。昼の出撃から不休で動きっぱなしなんですよ!?」
まだ帰還しようとしないシグナムをシャーリーは止めようとする。
「心配ない。この程度でどうにかなる程、ヤワな鍛えかたはしていない。一刻も早く、アスカを探し出してやらないと……」
「シグナムさん!」
聞き入れないシグナムに、シャーリーの声が大きくなる。
「闇雲に探したって効率が悪いだけです。アルトがまとめてくれたデータを再計算して、漂流した確率が高い世界を割り出しますから、もう帰還してください」
「一つでも多くの世界を回っておいた方が良いだろう」
「アスカを心配しているのはシグナムさんだけじゃないんですよ!」
「!」
痛い所を突かれ、シグナムは言葉に詰まった。
「……今、一番心配しているのは、フォワードの子達です。でも、あの子達は自分のできる事が見つかるまでは、大人しくしていると約束してくれました。真っ先に飛び出したい筈なのに……副隊長のシグナムさんがそんなに聞き分けが無いなんて、それこそ示しがつきませんよ」
シャーリーの諭す言葉に、シグナムは反論できなかった。
「……どうやら、私はまだ冷静になっていなかったらしい。これより帰還する」
「はい、お待ちしてます……あの、すみません、生意気言っちゃって」
「いや、感謝する。心配をかけたな、シャーリー」
通信を切って、シグナムは空を見上げた。
青白い光を放つ月が、砂の大海原を照らしている。
「アスカ……無事でいてくれ」
長い年月、シグナムは戦士として、騎士として戦いの場に身を置いてきた。
部下を持ったことなど無かった。
仲間と言うならば守護騎士が居たし、主がいた。その中に、なのはやフェイトが加わり、護るべき者は増えていったが、部下となると話は別だ。
闇の書事件が解決し、管理局に身を寄せる事になっても、一時的に下につく者はいたが、部下らしい部下と言うのは無かった。
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