第二百二十四話 大雪はその九
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「しかしな」
「事件それ自体は兎も角としてっちゃ」
「首を取られてもな」
「皆大喜びだったっちゃ」
「まことにな」
「本当に嫌われていたっちゃ」
「そうなっても当然たい」
香織の言葉は冷たかった、やはり印を押している。
「あれだけのことをしたら」
「嫌われてだな」
「幕府を護ろうとしてたい」
「幕府の法を捻じ曲げてはな」
「護れるものも護れんとよ」
「その通りだな」
「もう幕府が終わることが避けられんかったにしても」
時代の流れから見てそうでもというのだ。
「無茶苦茶たい」
「かえって幕府の名を落とした」
「そうもしたたいしな」
「嫌われて当然だな」
「今でも幕末の悪役たい」
それも最大のであろうか。
「水戸藩へのことといいあんまりだったとよ」
「それ故のことだな」
「桜田門外の変もたい」
「今でも不人気だしな」
「多分源頼朝さんと並ぶとよ」
最初の幕府である鎌倉幕府を開いた彼と、というのだ。
「あの人も不人気たいが」
「義経さんのことといいな」
「冷酷で陰湿なイメージば強かとよ」
「まさにそのせいでな」
「あの人も不人気たいが」
「井伊直弼もな」
「不人気たい」
こう言い切った。
「同じ位は」
「兎角嫌われている」
「あの人の様にはせんたいな」
「あの男は反面教師だ」
英雄も言い切った。
「その一人だ」
「そうたいな」
「俺は極悪人には容赦しないが」
「処刑ばどんどん行うたいな」
「それも苦しめるものをな」
敢えてそうしているというのだ。
「しかしな」
「それでもたいな」
「刑罰を重くすることはな」
「しないたいな」
「厳しい法と刑罰は定めて行わせるが」
それでもというのだ。
「あの様なことはだ」
「せんたいな」
「並の罪なら一等か二等軽くする」
本来の幕府の様にというのだ。
「そうしているしな」
「これからもたいな」
「そうする、入牢や遠島を死罪にする様なことはな」
まさに井伊直弼のことだ。
「文字通りにだ」
「法を涜するものたいな」
「涜武という言葉があるが」
無闇に戦を行うということだ、こうしたことをすればかえってその国力を弱めることは歴史にある通りだ。
「しかしな」
「法や刑罰もたいな」
「同じだ、涜することはだ」
それはというのだ。
「井伊直弼のすることだ」
「そしてそれを行えば」
「ああなる」
桜田門外の変の様なことになるというのだ。
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