帽子の青年
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」
青年はにいっと笑いながら、コヒメの頭に置いた手を離す。
コヒメはお辞儀をしながら、トコトコと可奈美のところに戻って来た。
「かなみ。あの……」
「いいんだよ。あのお客さんには、私から……」
「よもやよもやだ」
だが、可奈美が注意に向かうよりも先に、煉獄が青年のもとへ向かう。
「お客人! もし、話し相手が必要ならば、コヒメ嬢ではなくこの俺が相手になろう! 何かお悩みでもあるのかな!」
ぐいぐいと煉獄は、青年に絡んでいく。
「さあ! 何でも言ってくれ!」
「いやあ、別に悩みは……」
「そうか! それはよかった!」
煉獄が本気で言っているのか、それともコヒメを守るために言っているのか、可奈美には分からない。
だが、青年は誤魔化すようにコーヒーを口にした。
やがて煉獄が入口に戻っていくと、青年はコーヒーから口を離した。
「あ! そうそう……」
青年は思い出したように可奈美へ問いかけた。
煉獄が再び彼へ足を向けようとするよりも先に、青年は先を紡ぐ。
「僕、ここに知り合いがいるって聞いてきたんだよ」
「知り合いですか?」
煉獄は足を止め、持ち場に戻った。
「ハルト君はいないの?」
「え?」
突然の名前のカミングアウトに、可奈美は目が点になった。
「ハルトさん? もしかして、ハルトさんのお知り合いですか?」
「ふふっ! まあね。古い付き合いだよ」
「古い付き合い……」
ハルトに、長い知り合いがいたことなど、可奈美が知る由もなかった。
青年はコーヒーの香りを一通り楽しんだ後、口に付けた。
「ん、いいねこれ。落ち着くなあ」
青年は「うんうん」と香りを楽しみながら、コーヒーを啜る。
「あ、ねえねえお姉さん。砂糖もらってもいい?」
「はい、どうぞ」
可奈美は青年へ、砂糖を差し出す。
「ありがとう」
彼伝てに、ハルトのことを聞くものでもないだろう。
その時、可奈美は。
ハルトのことを、全く知らないな、ということを思い出した。
結局、彼は出された砂糖を淹れることなく、ラビットハウスを出ていった。
「あ、ハルトさん」
可奈美は片付けをしながら、帰ってきた同居人へ笑顔を見せる。
「おかえりなさい」
「ただいま〜」
「結構遅かったね」
「ああ。ちょっと甘兎庵に行ってた。買ったのはもうコネクトで送ってあるから」
「甘兎庵かあ……紗夜さんは元気?」
「ああ。結構馴染んでた……いや、あれは馴染みすぎてたかな」
ハルトはどこか遠い目をする。
「私、先月くらいにも甘兎庵に行ってみたけど、あそこって紗夜さん大丈夫なのかな? 紗夜さんみたいな真面目な性格
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