帽子の青年
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ば、何も起こらん。誰も死ぬこともない! それがいい!」
「……この男、バカなの?」
「あはは……」
苦笑する可奈美。
そこへ、白い人物が歩いてきた。
「お、お水をどうぞ……」
「コヒメちゃん!? なんで……?」
「うむ! お店を手伝いたいと申し出てな! マスターがコヒメ嬢のことを調べる合間、ここにいるとのことだ!」
「そういうことは最初に私とタカヒロさんに言って!」
可奈美はそう悲鳴を上げる。
一方、そんな可奈美の苦心などどこ吹く風、トコトコと左右に揺れながら、盆に乗せたグラスをその小さい手でほむらの前に置く。
その愛らしさに、可奈美は思わず笑ってしまった。
「うむ! いい心がけだ!」
「まあ、立派だけど……」
でも、荒魂が接客って大丈夫なのかな、と可奈美は疑問に思った。
そんな物思いの最中、更なる呼び鈴が、可奈美の意識を引き付ける。
「いらっしゃいませ」
それは、ハルトや煉獄と同世代の青年だった。
「ハロー! いいお店! おや? 君はこの前の……」
「フルールドラパンの……!」
以前、フルールドラパンで出会った青年。帽子、ストール、ウェーブがかった茶髪と、全ての特徴が一致していた。
あの時と変わらない、ニコニコ笑顔を見せる青年は、店内を見渡しながら静かに席に着く。
「へえ……オシャレなお店だなあ」
あなたの方がよっぽどオシャレですよ、と思いながら、可奈美は彼の座席に水を置く。
「ご注文はいかがなさいますか?」
「うーん、そうだなあ……?」
青年は顎に手を当てながら、
「じゃあ、オススメのコーヒーを頂戴。なんか温まる奴。今日寒いしね」
「かしこまりました!」
注文を承った可奈美は、早足でカウンターに戻っていく。剣術にも匹敵するくらい、動きが染みついた流れで、可奈美は焙煎したコーヒーを淹れた。
それと入れ違いで、コヒメがまた水を机に置いた。
「どうぞ」
「お? フフフ、ありがとう!」
青年はコップを受け取りながら、コヒメへ笑顔を見せる。
「君可愛いね。ここのお手伝いさん?」
「は、はい……」
コヒメはお盆で顔を隠しながら頷いた。
青年は続ける。
「まだ幼いのに偉いね。君、この前はあんまり僕と話してくれなかったけど、改めて聞かせて。お名前は何て言うのかな?」
青年はコヒメの頭を撫でながら尋ねた。
さすがに注意しなくてはと可奈美が口を開くと、それよりも先に他の声が先導する。
「やめなさい」
ぴしゃりと、後ろの席のほむらが言い放った。
「あれれ? どうしたのお姉さん」
「店員に変に絡むのはやめなさい。品が知れるわよ」
「おやおや。怖いお姉さんだ
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