第2部
テドン
不思議な夜の町
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船長のヒックスさんが見つけたと言うその町は、辺りがすっかり暗くなったと言うのに、家々のあちこちに煌々と光が漏れていたのが遠くからでも見てとれた。
あのあとなんとか山あいの入り江に停泊し船を降りたのだが、今まで室内にいたせいか、それとも暖かい地方にずっといたせいだろうか、肌を刺すような寒さが身に染みる。
船員さんの薦めで外套を羽織ってはいるが、それでも底冷えするほど寒い。 気づけばもう本格的な冬を迎えていた。
「イシスはあんなに暑かったのに。 場所が違うと、気候も全然違うんだね」
私がぼやくが、ユウリは無反応。 それでも寒さは感じているらしく、鼻の頭が赤くなっている。
「こんなに外は寒くて暗いのに、なんであの町はあんなに明るいのかな?」
普通は寒くなれば、暖炉に火をくべたり、部屋を暖めるための道具や燃料が必要になるので、なるべく消費しないために、日が落ちる頃にはもう皆寝てしまう。 少なくとも私の村ではそうだった。
けれどこの町は、夜になってもほとんどの家に明かりがついている。 遠くからでも目立つこの眠らない町は、アッサラームとはまた別の異様な雰囲気を放っていた。
町の入り口にたどり着くと、その光景はますます異質だった。 まず、こんな夜にもかかわらず、外を出歩いている人がちらほらいる。 アッサラームのように、夜でも開いている店があるから、というわけでもない。
おまけに、その人たちはみんな外套を着ていない。 それどころか半袖の人までいる。 この寒さに慣れているのだろうか?
この様子を見て推察されるのは一つ。
「ひょっとしてこの町って、夜の散歩ブームなのかな? 」
「何アホなこと言ってるんだ」
私の名推理に、冷たくあしらうユウリ。
「でも、なんか変じゃない? この町。 なんか不自然っていうか……」
「お前でも、多少は物の分別がつくようになったんだな」
明らかに馬鹿にした様子で言うと、ユウリは視線を巡らせる。
「まあ、何にしろ家に籠られるよりは全然いい。 その辺をフラフラしてるやつらに話を聞いてみるぞ」
そういって、最初に目に留まった一人の若い男性の元まで行き、声をかけた。
「おい。 ちょっといいか? 」
「おや、お二人さん、こんにちは。 旅人かい? 」
「ああ。 実は、この近くにあるネクロゴンドまで行きたいんだが、今火山が噴火して通れない。ほかにどこか通れる道があれば教えてくれないか? 」
「そうかい。 新婚旅行かい。 そりゃあ素敵な旅になりそうだ」
「は? 」
「いやあ、こんなにかわいい奥さんと一緒だなんて、うらやましいよ。 それじゃ、お幸せに! 」
若い男性は一方的にそういうと、さわやかな笑顔で私たちの前から歩き去った。
『……』
あまりに支離滅裂な会話
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