第2部
テドン
不思議な夜の町
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に、しばし言葉を失う私たち。
「…… 何か、間違っていたか? 」
ぽつりと、ユウリが低い声でつぶやく。
「俺はちゃんと相手にわかりやすいように尋ねたつもりだったんだが。 どうして新婚旅行なんて言葉が出てくるんだ? 」
「いや、私に言われても……」
不可解すぎて、私もどう捉えていいのかわからない。とりあえず今の男性は、忙しくてやんわり断るために、わざとジョークを交えて話を早く終わらそうとした、というかなり無理やりな解釈で納得することにした。
「相手が悪かった。 今度はあの女に聞いてみるか」
頭を切り替えたユウリが視線を向けた先にいたのは、買い物かごを手にした子供連れの女性だった。 四〜五歳ぐらいの女の子を連れて、楽しそうにおしゃべりをしている。
「それじゃあ今度は私が話しかけてみるよ。 あのー、すいません! 」
私の声に気づいたのか、こちらに視線を向ける女性と子供。 私が笑顔を見せると、二人も笑顔で返した。
「あの、私たち、この近くのネクロゴンドまで行きたいんですが、途中に火山があって通れないんです。 ほかに通れる道ってありますか? 」
多少言い方は違うが、ほぼユウリと同じ訪ね方だ。 女性は少し考えこんだ後、子供と顔を見合わせてほほ笑んだ。
「ふふっ。 メアリー、かわいいですって。 よかったわね。 でも、いずれはあなたたちにも子供ができるでしょう。 きっとあなたたちに似て、とてもやさしくて素敵な子供になると思うわ」
『???』
いや、だれもメアリーちゃんの話はしてないんだけど。 それに、私たちに子供ができる話なんて、どこから出てきたんだ?
「ゆっくりしていってね。 この町は何もないけれど、あなたたちのような素敵な旅人はみんな大歓迎よ」
そして、この親子も言いたいことだけ言って、さっさと先へ行ってしまった。
「えーと、どういうこと? 」
「そんなもん、俺が聞きたい」
二人して眉をひそめ、顔を見合わせる。
この町の人たちは、みんな人の話を聞かないのだろうか。
そのあとも、出歩いている人たちに片っ端から同じことを訪ねてみたが、どれも同じような反応だった。
どうやらみんな、私たちのことを新婚旅行中の男女の旅人だと思い込んでいるらしい。
「俺たちのことを正しく認識していないように見えるな」
「うん、そうだね」
会話だけでなく、私たちと話している間の人々の目線が、ちぐはぐなのだ。 普通目の前に人がいたら、その人の目線に合わせて話すだろう。 そうでない人もいるとは思うが、会う人皆が目を合わさないというのはおかしな話だ。
ただそんな中、何人かの町人は気になることをいっていた。
「ここはネクロゴンドに近いだろう? だからあまり旅人が訪れることはないんだ。けど、神のご加護の
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