第一章
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椎の木
沖縄の話である、ある村に仲のいい姉妹がいた。姉の名前はマキといい妹の名前はマナといった。姉妹は何をするにも一緒だった。
外見もそっくりで黒髪で大きな黒めがちの目を持っていた、小柄で元気がよくいつも笑っていた。そんな姉妹がある日親に言われて椎の実を取りに山に入った。
二人でせっせと拾っているうちに暗くなった、それで姉の方が言ってきた。
「もう帰ろう」
「うん、けれど」
妹は姉の言葉を受けて周りを見回して言った。
「ここ何処かな」
「何処かしら」
姉も周りを見回して言った。
「一体」
「わからないよね」
「実を拾うのに夢中で」
それでと言うのだった。
「ついついね」
「知らない場所にきちゃったね」
「困ったわ」
正直こう思うばかりになった。
「これは」
「うん、どうしよう」
「どうしようっていってもお家に帰るしかないし」
姉は妹に力なく答えた。
「だからね」108
「帰るのね」
「そうしよう」
こう妹に言った、もっと言えば言うしかなかった。
「これからね」
「それじゃあ」
妹も頷くしかなかった、それで二人で山道を歩いたがすっかり日が暮れてしまった。それで姉は妹に言った。
「もうどうにもならないから」
「どうするの?」
「寝よう」
こう言うのだった。
「そうしよう」
「寝るの」
「そうしよう、丁度ここに椎の木があるから」
「その下で?」
「休もう」
こう妹に言った。
「今夜は」
「お家じゃないのね」
「もう暗いしこれ以上歩いても仕方ないから」
だからだというのだ。
「もうね」
「ここで寝て」
「朝になってお日様が昇ったらまた道を探そう」
そして家に帰ろうというのだ、こう話してだった。
マキとマナは椎の木の下で寝た、腹は空いていたが歩き疲れていたのですぐに寝た、姉妹で寄り添って寝ていたが。
やがて周りに何か声が聞こえてきた、それでマナがマキに言った。
「お姉ちゃん、何か聞こえない?」
「?これは」
マキも妹に言われて気付いた。
「何か聞こえるね」
「うん、少しずつ大きくなってるけれど」
「何の声かな」
「何かあそこにね」
自分達がいる傍に何か見えた、それでだった。
マナが底を指差すとだった。
その場所を寝る前には大きな椎の木が沢山あった、二人は今いる椎の木の半分程もなかったがどれも大きな木ばかりだった、そしてその場所で。
緑の琉球の服を着た男や女が大勢いて踊っていた、どの者も結構な背だ。マナはそれを見てマキに尋ねた。
「あれ何かな」
「姉ちゃんにもわからないよ」
マキはこう答えるしかなかった。
「一体」
「お化けかな」
マナは一瞬こう思った。
「
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