第四章
[8]前話
「はい、石もです」
「狐や狸の様にですか」
「化けますか」
「そうなのですか」
「長い歳月を経ると」
まさに狐や狸の様にというのだ。
「心を持ってです」
「精となってですか」
「化けるのですね」
「今話した様に」
「はい、ですがその精は悪いことはしていないので」
極めて安く上手な按摩をしていることについても話した。
「放っておいてもです」
「いいですか」
「あの女は」
「特に何もしなくていいですか」
「左様ですか」
「はい」
こう石工達に答えた。
「心配はいりません、ですからこのままです」
「按摩を受けていいですか」
「あの女の」
「そうしていいですか」
「はい、安くて上手な按摩なら」
僧は笑って話した。
「それに越したことはないですね」
「人手も下手で高い按摩いますし」
「そうした按摩よりずっといいですね」
「確かに」
「ですから」
それでというのだ。
「このままでいいかと」
「わかりました」
「それならです」
「このまま受けていきます」
「そうしていきます」
石工達も頷いた、そしてだった。
僧と話をした次の日茂吉は女の按摩を受けた、その後で仲間達にすっきりしたという顔になって話した。
「いや、すっかりな」
「疲れが取れたか」
「仕事のそれが」
「そうなんだな」
「あの按摩はやっぱりいいな」
女のそれはというのだ。
「しかも安い」
「本当にいいことばかりだな」
「じゃあこれからもな」
「按摩をしてもらうか」
「そうだな、石でもいい」
その正体がというのだ。
「按摩が上手で安いならな」
「心根もいいしな」
「じゃあこれからもな」
「按摩してもらおうな」
「ずっといて欲しい位だ」
持木はこうも言って他の石工達も頷いた、そしてだった。
女はそれからも按摩をしていった、石工達はそんな彼女の存在を喜んだ。伊豆に伝わる古い話である。
石切り場の女 完
2021・3・12
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