第一章
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石切り場の女
江戸時代中頃のことである、伊豆の山中にあった石切り場は兎角忙しかった。働いている石工達は石を相手に日々働いていた。
それで一服する時や仕事が終わった時彼等はいつも言っていた。
「いつも大変だな」
「ああ、毎日重い石の相手してな」
「本当に大変だ」
「石を切るのも難しい」
「運ぶのは重い」
「飯の種とはいえ石は厄介だ」
「こんな大変な相手もない」
こう口々に言い合うのだった。
「石程はな」
「全くだ、人間相手の方がまだ楽かもな」
「重くないし当たると痛くもない」
「そして硬くもない」
「こんなに怪我もしないしな」
「人間の方がよっぽど楽だ」
こうしたことを仕事の合間に話していた、そうしながら大変な仕事で疲れた身体を労わっていたがある日。
石切り場に一人の女が出て来た、それは大層奇麗な女で色白で目は切れ長で眉は細い。すらりとしていて動きも色気がある。
その女を見て石切り場の誰もが言った。
「何だあの女」
「はじめて見るぞ」
「こんな場所に女が来るのか」
「それもあんな奇麗な女が」
「一体何処から来たんだ」
「この近くの民家にいたか」
「いや、知らないぞ」
「お身体を揉みましょうか」
女は自分を見ていぶかしむ石工達にその言葉を気にせずに笑って言ってきた。
「これから。私は按摩なので」
「あんた按摩か」
「そうなのか」
「だからここに来たのか」
「そうなのか」
「はい、安いですよ」
銭の話もしてきた、そしてその額を聞くと石工達も言った。
「確かに安いな」
「飴玉一個分じゃないか」
「それで按摩してくれるなら安いな」
「というか按摩の値段じゃないな」
「それじゃあか」
「その金でか」
「按摩をさせてもらいます」
女は石工達ににこりとして答えた。
「どうでしょうか」
「ああ、それなら頼む」
「その安さならな」
「それならな」
「それでは」
こうしてだった、女は石工達の按摩をしていった、するとだった。
石工達の身体はこれまでの疲れが嘘の様に消えてだった、すっかり楽になった。中には按摩されている中で寝る者すらいた。
それでだ、彼等は口々に話した。
「凄いのが来たな」
「全くだ、とんでもなく腕のいい按摩だな」
「しかも別嬪だしな」
「顔立ちもいいしな」
「おまけに金は信じられない程安い」
「本当に凄いのが来たな」
「これまでこんなところに按摩自体来なかったのにな」
山の辺鄙なところだからだ。
「それでも来てくれて」
「わし等を助けてくれてるしな」
「こんないいことはないな」
「全くだ」
「本当によかったな」
「しかしな」
ここで年配の白髪の髷で皺だらけの顔の年配の石工が言っ
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