第一章
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昔の江戸っ子爺さん
今年八十になる鈴木義龍は趣味は風呂と食べ歩きである、好きな食べものはもんじゃ焼きにざるそばである。
特にざるそばが好きで週に三回は食べているが。
曾孫で高校生円香によく言われていた。
「ひいお祖父ちゃん、噛まないと」
「蕎麦もか」
「そうよ、ちゃんと噛まないとね」
やや面長で切れ長の睫毛の長い目で細く長い眉である、小さな赤い唇で色白である。背は一六四程で黒髪のロングヘアでグレーの短いスカートと黒のブラウスに青と白のストライブのリボンと白のブラウスの制服が似合っている。
「身体に悪いわよ」
「おい、俺はここで生まれ育ってるんだぞ」
義龍は曾孫にこう返した、曾孫は多いが同居しているのは彼女一人である。六十年近く一緒の女房に長男夫婦その長男の長男の孫夫婦そして彼女の四世帯家族である。
「それならな」
「東京の葛飾生まれだから?」
「そうだ、江戸っ子だぞ」
だからだというのだ。
「江戸っ子は宵越しの銭も持たないしな」
「お蕎麦もなのよね」
「噛むか」
こう曾孫に言うのだった。
「絶対にな」
「それで飲み込むのね」
「蕎麦は喉越しを味わうものだ」
そうして食べるものだというのだ。
「だからな」
「噛まないのね」
「蕎麦はそうして食うものだ」
「それで食べるのは冬でもざるかせいろなのね」
「それも江戸っ子だ、しかもうちは江戸時代からここにいるんだぞ」
「三代どころかなの」
「そうだけいるからな」
だからだというのだ。
「俺はな」
「それでなの」
「そうだ、江戸っ子の粋にかけてな」
それでというのだ。
「俺は蕎麦は噛むか」
「いつもざるかせいろで」
「茶も飲まないんだ」
そうするというのだ。
「そば湯を飲むんだ」
「お茶はあがりだから飲まないのね」
「そうだ、お前もそうしろ」
「私お茶好きだし冷え性だからね」
曾孫は曽祖父に反論した。
「冬は温かいもの食べるから」
「だから冬は汁そばか」
「そっちよ。おうどんも食べるしね」
「やれやれだな、江戸っ子も廃れたもんだ」
「廃れたんじゃなくて寒いからよ」
冬にざるを食べると、というのだ。
「それで消化に悪いからちゃんと噛むの」
「お前には粋はねえのか」
「健康第一よ」
あくまでこう言う曾孫だった、だが義龍はあくまでだった。
蕎麦は構わなかった、曾孫よりも小柄だが背筋はしゃんとして痩せている、白髪頭は短く皺だらけの顔の表情は強く目の光も同じだ。
毎日散歩をしっかりして頭も同じだ、そして。
蕎麦についてはそうで毎日風呂も楽しみ時々銭湯だけでなくスーパー銭湯も行くがそれでもだった。
家に帰ってだ、彼は怒って言った。
「全く、スーパー銭
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