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ドラゴンクエストX〜イレギュラーな冒険譚〜
第七十六話 妖精郷
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「助けていただいて、ありがとうございます」
 妖精の少女は笑顔で私達に礼を述べる。
 下手に交戦していた場合、妖精を巻き込んでしまうだけでなく、警戒され逃げ出される可能性もあったから、まず最初に魔物を睡眠呪文で無力化しておいて正解だった。
「今けがを治してあげるからね」
 レックスは妖精の怪我した足にホイミをかけた。
 最初は拙かった回復呪文も、もうすっかり手慣れたものになっていた。普段は気付く機会が少ないが、ふとした拍子に教え子の成長に気付かされる。
「あなた達はなぜここに……?」
「僕たちは妖精の女王様に会いたいんだ」
「そのために君たちの案内を必要としている」
 しばらく妖精はレックスとアベルを、そして私達をじっくりと見つめた。
 まだその瞳にはわずかに警戒の色が浮かんでいる。助けられた恩があるとはいえ、簡単に余所者を自分達の領域に連れて行きたくはないのだろう。
 それは別にごく自然のことだ。
 だから残り僅かな警戒を解きほぐしてくれるように、私達が妖精にとって危険ではないと示すしかない。
「ここ数年、魔物の気配が強くなっているのはわかるわよね。私達は世界を救う旅をしているの。目の前に立っているのが今代の勇者よ」
 勇者。
 その一言が強い力を持っていたことは、妖精の瞳が驚きで大きく開くのを見れば充分わかった。それ以上の補足が何も必要ない事も。 
「おねがいします、どうか妖精の里へと案内してくださいっ」
「……そうね。こんなに小さいけれど、勇者というのは本当のようだし。あなた達も良い人そうだから案内してあげるわ。でもその代わり、魔物が出たら守ってね」
「うん、絶対守るよ!」
 具体的な動機や経緯や素性を話していないのに、勇者の一言だけで完全に警戒を解いてくれたことは手間がかからなくてありがたい反面、これまでの苦労を想うとどこか拍子抜けしてしまっている自分がいる。最初からこちらに勇者がいると伝えられる手段があれば、今までの苦労はしなかっただろうと、そんな感想がよぎった。
 そんなことは『たられば』であるし、無事に妖精との協力を取り付けられたことで何も問題はない。
 なのに、そんなことを考えてしまったのは勇者という名前が持つ力を実感してしまったからか。
 そこまで考えたところで無駄な思考を振り払った。
 余計なことに頭を回す必要はない。そんなことより、魔物の気配などを探る方が最優先だ。
「先生、北西の方角から来ます。数は3〜4体程、そこまで強くはありませんっ」
 タバサの指示に従って速やかにバギマを放つ。
 相手の魔物はこちらが先に仕掛けてくるとは思ってなかったのか、抵抗もできずに周囲の植物ごと吹き飛ばされた。
「急いだほうが良さそうね」
 妖精の少女は進む速度を上げ、私達もそれに続いて歩く速度を上げ
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