暁 〜小説投稿サイト〜
SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第二章 〜罪と罰〜
その十四
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か色気を感じさせる。

「ああ、そうだな……」

 楓の方が綺麗だ、という言葉を飲み込みつつそう答える。よく映画やドラマなどで出てくる台詞だが、まさか自分が現実に口にしそうになるとは思ってもみなかった。

「なあ、楓」

 少し心を落ち着けてから、花火に見入っている楓に声をかける。

「はい」

「俺達、一緒にいるよな。約束通り」

「え……」

 唐突な稟の台詞に、楓は言葉を失い、目を見開く。それを見て、稟の心に安堵が広がる。楓は、ちゃんと覚えていてくれた。自分と同じ記憶を、約束を。湧き上がってくる歓喜のままに、言葉を続ける。

「あの時と同じだな。夏の夜、この場所で、花火をしながら約束した」

「稟君……覚えて……」

「大事な約束なんだ。忘れようがないだろう?」

 そう言って、稟は苦笑した。
 幼い頃の夏の夜、自分と楓がこの芙蓉家の庭で、輝く七色の光の中で交わした指切り。忘れるわけがない、大切な記憶、大切な約束。

「忘れているって……忘れられているって……思っていました……」

 少し目を伏せたまま、呟くように言葉を漏らす楓。良く見れば、少し震えているようだ。寒さからでは決してない。

「稟君を、あんなに苦しませてきた私との約束なんて、とっくに忘れてしまっているって……」

「いや、むしろあの約束があったから、俺は今ここにいる。というか俺の方こそ、楓は忘れてるのかもしれないって思ってた」

 幸いにして、杞憂で済んだが。

「忘れるなんて事……ありません。忘れられるわけが……ないですから」

 頭を振り、稟の言葉を否定する。その声は、弱々しく震えているが強かった。

「良かった」

 そう言って稟は、丁度いいタイミングで消えた花火を楓の手から取ってバケツに放り込み、楓を抱きしめた。

「ひゃっ!? あ、あの……稟君?」

 楓が落ち着くまで、しばし待つ。

「なあ、楓。もう一回、約束しよう。あの時と同じ約束を」

「でも……」

「……嫌か?」

「嫌なわけ、ありません。でも……」

 体を離しながら楓が言う。

「稟君、聞いてもらってもいいですか?」

「ああ」

 頷く稟を見て楓は語り始めた。 
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