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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
帝国領侵攻作戦(その2)
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スクリーンに映った。常に変わらぬ陰気な顔だ、何となく気が滅入った。文句あるのか、この野郎。お前が食料奪おうなんて馬鹿な事を言うのが悪いんだ。参謀長ならもう少しまともな作戦案を考えろ!

後でネコ耳チャンの映像を見て元気を取り戻そう、あのアップルパイを思い出すんだ。我が至福の時間、至高のアップルパイ……。あの映像を見れば必ず気分はハイになる。でもハイになりすぎないように気をつけなければならん。それとヴァレンシュタイン大佐に見つからないようにこっそりとだ。別に怒られるわけではないし、軽蔑されるわけでもないが何となくその方が良さそうな気がする。

『ビッテンフェルト提督、ローエングラム伯がお呼びです。至急閣下の執務室に出頭していただきたい』
「了解した」
それで終わりだった。何も映さなくなったスクリーンを見ながらあの男には友達など居ないのだろうなと思った。

決裁文書のサインを一旦切り上げ元帥閣下の執務室に赴くがどういうわけか足取りが重くなった。執務室には当たり前だが元帥閣下とオーベルシュタインがいる。オーベルシュタインは血色の悪い顔で無表情に俺を見ていた。その爬虫類みたいな目で俺を見るんじゃない! 何となく嫌な予感がした、どういう用件だろう。

俺が入り口で戸惑っていると元帥閣下が明るい声で“そこでは話が遠い、こちらへ”と俺を呼んだ。どうやら悪い話ではないらしい。ほっとすると同時に猛烈に腹が立った。紛らわしい顔をするな、この白髪頭! 他人を不安にさせて楽しいか? だからお前は周囲から受けが悪いんだ。せめて笑顔を見せてみろ、そうすれば俺に爬虫類と言われずに済む。

「ビッテンフェルト提督、卿に来てもらったのは他でもない、いずれ来る反乱軍への反攻についてだ」
「はっ」
「その折、卿にはケスラー、アイゼナッハ、ミュラー、キルヒアイスを率いてもらう」
「は? 小官がでありますか」

思わず間の抜けた声を出してしまった。元帥閣下が可笑しそうに笑い声を上げる。
「そうだ、彼らには既に伝えてある。反攻の時期は近い、連携を執れるようにしておいてくれ」
「はっ」

それで話は終わりだった。ケスラー、アイゼナッハ、ミュラー、キルヒアイスか……。確かに彼らの艦隊は一個艦隊に満たない。ケスラー、アイゼナッハ、ミュラーが約五千隻、キルヒアイスが二千隻程だ。反乱軍に当てるには戦力として劣弱に過ぎる。誰かの艦隊に付属させるというのは分かるが全員を俺の所にか……。キルヒアイス少将は元帥閣下御自身の傍に置きそうなものだが……。喜びよりも困惑の方が大きかった。

自分の部屋に戻り皆にその事を告げると口々に“おめでとうございます”と言われた。
「これで提督が名実ともにローエングラム元帥府のbQですな」
「その通り、指揮下の兵力は三万隻を超えます」

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