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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
帝国領侵攻作戦(その2)
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「そうか、辺境星域では大変だったと思うが……」
俺が労うとケスラー提督は笑い出した。
「まさか食糧を我々に奪われたという事にして隠せとはな。住民達は最初、何を言われているのか分からずポカンとしていたぞ。卿の発案らしいな、面白い案だ」
「うむ、まあ……」
最初の案を考えると、いや、オーベルシュタインの事を考えると素直に笑う事が出来ん……。
「浮かぬ顔だな」
「……そんなことはない、俺は極めて単純な男だ。ケスラー提督に褒められれば嬉しいさ」
「昔は単純だったかも知れんが今は違うだろう。ロイエンタールも卿が変わったと言っているぞ」
ワーレンが俺が変わったと言っているが俺には良く分からん。やらなければならないと思った事をやっただけだ。俺は馬鹿と呼ばれてもかまわんが卑怯者とは呼ばれたくない。弱い者を、ましてや味方を踏みにじるなど到底出来ん。それだけだ。
心配なのは元帥閣下だ。今回は未然に防げたとは言え、あんな作戦案を受け入れたとは……。これきりで有って欲しいものだ。しかし、そばにはオーベルシュタインが参謀長としている……。心配は尽きんな、だからだろう、ネコ耳ちゃんに会いたくなる。
「……当初は住民達から食糧を奪うという案だったとメックリンガー提督から聞いた。良く止めてくれた。もう少しで俺が食糧を奪う役になっていた、卿には感謝しているよ」
ケスラー提督が沈鬱な表情になった。いかんな、帰還早々心配をさせるのは俺の本意ではない。
「なに、大したことじゃない。俺には頼りになる部下がいるのでな。それより俺達が引き留めていてなんだが急いだ方がよいな、元帥閣下も卿の報告を待っているだろう」
「そうだな、では失礼する」
ケスラー提督が笑顔を浮かべて片手を上げたので俺もワーレンも手を上げてそれに応えた。ケスラー提督が俺達に背を見せて歩き出す。暫くケスラー提督の後姿を見送ってからワーレンと別れ自分の部屋に戻った。
部屋に戻るとヴァレンシュタイン大佐が待っていた。ネコ耳ちゃんじゃないぞ、これはヴァレンシュタイン大佐だ。大佐は決裁文書にサインが欲しいらしい。一つ一つ確認を取りながらサインをしていく。以前碌に見ずにサインをして彼女に怒られたことがある。艦隊司令官は艦隊の責任者であり戦う事だけが仕事ではないと言われた。
もっともな意見だ、それ以来書類を見るのは苦手だが真面目に見るようにしている。幸い俺の所に来る文書は事前に彼女が確認をしてくれる。間違いや言い回しの分かり辛い所は彼女が手直しさせているので俺が見るときには比較的見易い、理解し易い文書になっている。おかげで余り決裁に負担を感じる事は無くなった。
あと二、三の文書のサインをすれば終わるという時だった。TV電話の呼び出し音が鳴り受信するとオーベルシュタイン大佐の顔が
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