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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
帝国領侵攻作戦(その2)
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「ビッテンフェルト提督」
「……ワーレン提督?」
なんでワーレンが俺の家に居るんだ? いや、大体ここは何処だ? 俺の家じゃない、俺の家は一体何処に……、それにネコ耳ちゃん、ネコ耳ちゃんは何処に行った?
「大丈夫か、ビッテンフェルト提督」
「いや、大丈夫だ」
「心配したぞ、何度か声をかけたのだが返事をしないのだからな、本当に大丈夫か」
あれは夢? 幻? しかし、確かに俺にはネコ耳ちゃんが見えた、声も聞こえたのだが……。
ワーレンが心配そうな表情で俺を見ている。とりあえず、この場を何とかしないといかんな。
「済まぬな、ワーレン提督。つい考え事をしていて気付かなかったようだ。問題ない、大丈夫だ」
俺の言葉にワーレンが深刻そうな表情をした。そして小声で問い掛けてくる。
「参謀長の事か」
「あ、いや、まあ、……そんなところだ」
オーベルシュタインの事を考えていたわけではないがワーレンの心配そうな顔を見ると間違ってもネコ耳ちゃんの事を考えていた、いや妄想していたとは言えん。済まん、嘘を吐いた、ワーレン、ネコ耳ちゃん。お前の所為にしたが悪く思うなよ、白髪頭……。
「気持ちは分かるがあまり考え過ぎると身体を壊すぞ。もうすぐ大きな戦いが始まるのだ、気を付けないと……」
「うむ、そうだな、気を付けるとしよう」
ワーレン、卿は良い男だな。卿と知り合えたのは俺にとって全くもって幸運だった……。
ようやく思い出した。俺は昼食を外でとって元帥府に戻ってきたところだったのだ。どうやら戻る途中で妄想に囚われたらしい。多分、昨日の夜、あれを五回見た所為だ。その所為で今朝方変な夢を見たが、その続きを見ていたらしい……。
いかんな、気を付けよう。あれは常習性と催幻覚性が有るようだ。夜見るのは二回までに制限したほうが良さそうだな。そう言えばこの間、オイゲンがぼんやりしていたな、グレーブナーもだ。まさかとは思うがあいつらも幻覚を見ている可能性がある……。
変な事故が起きる前に艦隊内に周知した方が良いかもしれん。あれを見るのは昼は一回、夜は二回までに留めろと。このままでは現実と妄想の区別がつかなくなる奴が出てくる危険性が有る。そうなる前に手を打たねば……。甘美なだけに危険だ。
前方に見慣れた後姿の男がいた。どうやら戻ってきたらしい。話を変えるのにも丁度良いだろう。
「ワーレン提督、あれはケスラー提督ではないかな」
「うむ、そうだな。辺境星域から戻ってきたらしい」
「ケスラー提督、戻られたのか」
近寄って俺が声をかけるとケスラー提督が振り返って破顔した。懐かしい笑顔だ。何時も思うのだが良い笑顔をするな、ケスラー提督は。
「ビッテンフェルト提督、ワーレン提督。今戻ってきたところだよ。これから元帥閣下に報告をしに行く」
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