暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第二章 〜対連合軍〜
百二 〜苦悩と愛〜 
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そのような気になろう筈もない。
「この事、風ちゃん達にもお話しになりますか?」
「無論だ。皆とは、そのように約定している」
「そうですか。……ふふ」
 紫苑が、私に抱き付いてきた。
 豊満な胸の感触……何とも言えぬ。
「では、負けないように一層、精進しないといけませんわね」
「勝ち負けなどない。私と契る者に、順位も上下もないぞ」
「わかっています。でも、張り合いにはなりますから」
「……ならば良い。璃々には、何と申すつもりか?」
「あの娘には、もう話しました。その上で、鈴々ちゃんに預けましたから」
「あの歳で、良くも理解したものだな?」
「うふふ、璃々を育てたのは私ですよ?……あ、ただ」
「む? 何かあるのか?」
 紫苑は苦笑して、
「あの娘ったら、こんな事を言い出しまして。『璃々も大人になったら、おかあさんみたいに愛して貰えるかな?』って」
「……それで、何と答えたのだ?」
「あなた次第よ、と言いましたわ」
 ……全く、悪びれもせずに。
「勿論、歳三様がその時になって、璃々が相手をするに相応しいと思えたら……ですわ」
 紫苑が、腕に力を込める。
「つまり、それまで私は死ねぬという事か」
「はい。お守りしますわ、私の力の限り」
 十年か、もっと先の事ではないか。
 明日をも知れぬ世で、未来の話など滑稽無糖ではある。
 ……だが、紫苑は何故か、確信ありげだ。
「紫苑」
「はい」
「……ならば、お前も死んではならぬ。良いな?」
「……御意ですわ」
 また一つ、守るべき者が増えた。
 いや、二つだな。
 ……そう、月の事で思い悩んでばかりはおられぬ。
 迷うぐらいならば、前に進む……それだけの事だ。
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