第二部
第二章 〜対連合軍〜
百二 〜苦悩と愛〜
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ば、少しずつ改めねばなるまいな。
……無論、勝てばの話ではあるが。
「お父様?」
「何だ?」
「どうかなさいましたか? 何か、お考えのようですが」
「……然したる事ではない」
「仰って下さい。……お父様に、隠し事をされるような娘でいたくありませんから」
むう、また落ち込ませてしまったか。
「いや、つくづく父親失格だと思い知らせただけだ」
「お父様が? そのような事ありません!」
「月。お前は優しい娘だ、私を気遣っているのであろうが」
「いいえ、そんな事はありません。今、私がこうしていられるのもお父様のお陰です」
「斯様な事はあるまい。お前には詠や霞、恋、閃嘩らがいるではないか」
「確かに、皆さんは至らない私を支えて下さっています。ですが、私はお父様のように果断ではありません」
「…………」
「今は、残念ながら戦乱の世です。……私みたいな人間が、上に立つべきじゃないんです」
「それは違うぞ、月。お前は優しいが、それ以上に芯の強さがある。だからこそ、皆がついてくるのだ」
「そうでしょうか。この性格は、乱世に向いていません」
小さく頭を振る月。
「この戦が終わったら、私は全ての職を辞するつもりです」
「月、あまり思い詰めるでない」
「いいえ、ずっと考えていたんです。この戦乱の世を一刻も早く終わらせるにはどうしたらいいか。自分では何が出来るんだろうって」
「…………」
「勿論、お父様にはずっとついて行きます。……いえ、お父様のお手伝いをさせて欲しいんです」
「馬鹿を申せ。私は戦いしか能のない男だ、お前こそ皆を従え、国を作る力がある筈だ」
「それでは駄目なんです。それに、お父様が強いだけの御方じゃないって事ぐらい、皆さんがよくご存じですよ?」
「しかし……」
月は、私の手を握ってきた。
「お願いです、お父様。私の分まで、皆さんが笑顔で過ごせる国にして下さい」
「月……」
「お願いします……ううっ」
感極まったのか、月は泣き出してしまう。
こういう場合、どうすればいいのかわからぬ……全く、難儀な事だ。
「月。この事は、詠に話したのか?」
月は、静かに頭を振る。
「それではならぬ。詠は、誰よりもお前の事を想い、大切にしているではないか」
「詠ちゃんなら、きっとわかってくれますから」
確かに、月を誰よりも理解しているのは詠であろう。
遺憾ながら、私は父として娘の事を正しく知っているとは言えぬ。
先ほどの独白でさえそうだ。
本来ならば、真っ先に気づいてやらぬというのに。
「ううっ……お父様……」
月の涙は、止むところを知らぬようだ。
それどころか、私の胸に顔を押しつけてきた。
私に出来る事は、その小さな背を、そっと抱いてやる事ぐらい。
……つくづく、父親失格
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