第七十五話 妖精
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だ。
さっきから休憩をはさんでいるとはいえ、かなりの距離を歩かせているしずっと探知能力も使わせている。
もちろん同じようなことはレックスにも言える。
そうした事情もあって私はアベルの意見に賛成した。
「それじゃあ、戻りましょうか。リレミーー」
脱出呪文を唱えようとして、タバサがある一点を見つめていることに気づいた。
「どうしたの? 何か見つけた?」
「先生、あれ……」
おそるおそるタバサは指さす。
その方向には一匹の魔物が歩いていた。幸いまだこちらには気づいていない。
「気づかれないうちに戻るわよ」
「違うんです」
タバサの目は大きく見開かれていた。
「あの魔物が向かっている先に、感じるんです。気配を」
何の気配かは言わずともわかった。
「アベル、レックス!」
二人とも私達の会話を聞いてくれていたお陰ですぐに状況を把握してくれた。
「急いで助けなくちゃ。怪我してるのか気配が弱々しいです」
普段落ち着いている彼女からは考えられないほど、その表情は切羽詰まっていた。
「わかった。急ぎましょう」
妖精を助けに向かいながら、私はタバサの表情を思い返す。
気配でしか感じ取れないものの、今にも襲われそうな妖精を必死に案じていた彼女。
けれど私はまず手がかりが見つかったとしか感じ取れなかった。
そんな自己嫌悪を抱きながら、私は走った。
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