第二章「クルセイド編」
第十八話「少女の激情」
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ってしまう。それがどうしようもなく悲しかった。
聡明では有るがフェイトがまだ九歳の女の子なのだ、そんなことを「はいそうですか」と受け止めるなんて残酷な事は本来『しなくてもいい』事でさえある。そういう意味で恐ろしいほどに世界は不平等なのだろう。少なくともフェイトには優しくない。
「リオンさん……」
嫌いでは無い。寧ろ好きな人間だ。その強さには憧れるしぶっきらぼうな優しさはアルフやバルディッシュやリニスとも違う安らぎを彼女に与えてくれる、兄と言う存在を知らないフェイトだったがまさしくフェイトはそんな感情をリオンとシャルティエに持っていた。だが、自分と同じ。そう考えるには余りに彼等は強すぎた。
「サー……」
「ごめんバルディッシュ……今は黙ってて」
強い人間の言う事は正しい。そして弱い人間は間違いを犯す。だからこそ今はフェイトは認めたくなかった。自分でも愚かだとわかるような願い「母さんはきっと生きていて自分はまだ娘でいられる」と言う考えを否定して欲しくはなかった。そしてリオンはきっと……いや、間違いなくそれを否定してしまうだろう。それが堪らなく怖かった。
「……うっ、ううう」
堪えていた訳ではない。ただそれを流したら記憶と共に流れ出てしまいそうだと思っていたのかも入れない。悲しみが粒となって目から落ちていく。もう限界だった。
「うぐっあっ。か、あさん………母さん……あああああああ」
……あの後プレシアが自ら虚数空間に身を投げた事をフェイトは知らない。救いが有るとすればその位か。
そしてこの世界は、何処までもフェイトに優しくなかった。
「……大きな魔力だな」
泣きじゃくるフェイトを見ながらそう呟いた者がいた。
「だ、れ?リオ、ンさん?」
歯噛みする気配がした。そして結界が張られる、そこでフェイトは漸く気付けた。敵襲なのだと、そして自分が今どういう立場なのかを。世界は彼女が落ち着いて悲しむ事すら許さなかった。
凄まじい剣閃がフェイトに幾重にも襲い掛かる。即座にバルディッシュを起動して避けるまでは成功した、が。
「なんて切れ味……」
その剣閃はその周りに立っていた木々を容赦なく薙ぎ倒した。それは防御の薄いフェイトでは到底耐えられない威力を示していた。強者の気配がフェイトの神経を刺激する。再び剣閃が弧を描いてフェイトに襲い掛かった。
「サー!!」
これほどの敵と戦えるほど、フェイトはまだ冷静ではない……そう判断したバルディッシュが逃げるように指示をしようとした。だがフェイトはバルディッシュの予想を遥かに超える行動に出た。
「何をするんだ……」
フェイトには決して似合わぬ憎悪に満ちた眼差し。謎の剣士もその眼光には一歩引いた。
「
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