暁 〜小説投稿サイト〜
魔道戦記リリカルなのはANSUR〜Last codE〜
Saga32彼の今〜Side Asgard〜
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オンの頭の中の霞が徐々に晴れていき、そして自分に起きたことを完全に思い出した彼は目を見開き、顔を青褪めさせた。
「あ・・・あああ・・・・あああああああああああああああああああああああああ!!」
「マスター!」
シェフィリス、シエル、カノンの死を思い出したことでルシリオンが絶叫した。フェンリル達はもちろん知らないが、彼にはもう“界律の守護神テスタメント”時代の記憶が無い。ゆえに自身がガーデンベルグに負けて、上級術式で苦し紛れの反撃をしたところで記憶と意識が途切れており、再開はたった今。錯乱するのもおかしくはなかった。
「マスター! お願い! 落ち着いて!」
「守れなかった! 救えなかった! あまつさえ自分自身さえも! シエル達は私の目の前で殺され、ガーデンベルグ達の行方も判らない!」
「ルシリオン様! どうか冷静に!」
「グローイ! 貴方はすでにガーデベンルグ、リアンシェルト、グランフェリア、バンヘルド、レーゼフェア、フィヨルツェン、シュヴァリエルのエグリゴリ残党を破壊したぞ!」
フレースヴェルグはフェンリルから聞いていた“堕天使戦争”の結末を簡潔に伝えたのだが、ルシリオンは「何を馬鹿なことを!」と一蹴した。ヨルムンガンドも「信じられぬかもしれませんが事実なのです!」と伝えた。
「そんなわけがないだろう! ガーデンベルグのユルソーンで、私は腹を貫かれたのだ! そんな体でどうやってあの子たちを!・・・あの子たちを・・・ん?」
ルシリオンは自身の腹をペタペタと触り、さらには戦闘甲冑と同じデザインのアースガルド軍服の前を勢いよく開け、素肌をしっかりと確認した。これまでの人生の中で追ってきた古傷は多数あるものの“ユルソーン”によって付けられたはずの刺し傷は無かった。
「治って・・・? いや、え?」
混乱は続いているが覚醒直後よりは冷静さを取り戻したルシリオンは、「ユルソーンを破壊した覚えはないぞ」と、フェンリル達を見た。その言葉を聞いてフェンリルは疑問符を浮かべ、「ねえ、マスター。ひょっとして、テスタメントだったことを忘れてたりする・・・?」と問う。
「テスタメント? 遺言や契約という意味の言葉だが・・・。それが私と何の関係があるというのだ?」
その返答でフェンリル達は顔を見合わせ、約2万年の“テスタメント”時代の記憶を失っているのだと判断。フェンリルは、マリアという“テスタメント”から聞いていた、奴隷のような時間のことを話していいのか迷いはしたが、せめて堕天使戦争決戦が行われた世界のことを伝えようと考えた。
「マスター。八神はやてという女の子について、何か憶えてる?」
「ヤガミハヤテ? どこの世界人の名だ? これまで生きてきた中で、そのような変わった名前の女性と知り合いに
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