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ペルソナ3 異界の虚影
中編
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、ゆかり が首を振った。
「戦いはまだ終わってない。先に進まないと・・・。こんな状態のところに敵がきたらどうしようもなくなる。回復したら動けるメンバーですぐ後を追うから、今は先に進んで。」
「・・・・。」
みんなの状態が気になったが、ゆかり の言う事にも一理ある。
私たちは目を見合わせてうなずいた。
「わかった。」
「お願いね。」
後ろ髪をひかれる思いで立ち上がると、私はみんなに背を向けて走り出す。
『私がここからサポートします。気を付けて。』
風花が声をかけてくる。
それに手を上げて応えると、薙刀《なぎなた》をつかんで階段を駆け上がった。

階段は正常な状態の学生寮よりずっと長く続いていた。やはり空間が歪んでいる。建物の2階に上がるというより、まるで塔でも登っているような感じだ。
息を切らせてようやく上がりきると、そこもやはり1階と同じような、ただれて黒ずんだ広い空間となっていた。
「やれやれ。君たちは本当にしぶといねえ。」と声がする。
聞き覚えのある軽い口調だった。
私はそこに立ちふさがっている男をにらみつけた。
「どうせあなたも幾月さんじゃないんでしょ。」
幾月修二にそっくりな男は、私の言葉に肩をすくめて笑った。
「いやはや手厳しい。」
かつて月光館学園の理事長で、特別課外活動部の顧問だった男。そして人類全体に対する裏切り者だ。
「どうして死んだ人の姿をまねる。何が目的だ。」
「別に僕が姿をまねているわけじゃないさ。これは君たち自身がやっていることなんだよ。この姿は君たちが心に残しているものなのさ。」
「どういう意味?」
幾月が語りかけてくる様は、私の記憶に残る幾月の姿と全くぶれていない。
いや・・・
もしかすると逆ではないのか?
私たちの記憶の方が、その姿に投影されているのではないか?
「君たちはまもなく大きな戦いを迎える。勝ち目のない戦いだ。それはよくわかっているだろ。たとえどんなに決心を固めていても、怖れはある。迷いもある。心残りだってある。」
「つまり・・・あんたたちのその姿は、私たちの『怖れ』や『迷い』、『心残り』なんかが実体化したものっていうこと?」
今度は私が問いかけた。
幾月は一瞬驚いた表情を浮かべ、それからこちらをからかうように軽く拍手した。
「察しがいいね〜。さすがだよ。死んでしまった人、助けられなかった人には強く心が残っている。その心に残った迷いが具現化して君たちと対峙し、君たち自身の決意を揺るがしているのさ。」
「たとえそうだとしても・・・幾月、お前の死を悔やんでなんかいない。」
「それはそうだろうね。・・・でも後悔はしているのさ。僕の本心や行動にもっと早く気づけていれば、こんな事態は避けられたかもしれない。もっと別の道もあったかもしれない。死なないで済んだ人も
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