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ペルソナ3 異界の虚影
前編
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う。」
「彼女の死亡は、病院で確認されている。間違いはない。」
美鶴さんも厳しい口調でそう付け加えた。
「・・・でも・・・でも・・・」
動揺する順平。
「しっかりしろ。ここは現実世界じゃないんだ。本物であるはずが無いだろう。惑わされるな。」
困惑した様子の順平を抑えつけたまま、真田さんが声を張り上げた。

ジャラララッ

そこに金属的な音をたてて、重い固まりが勢い良く飛んでくる。
「危ない!」
アイギスが飛び出して、それを手刀ではじき飛ばした。
固まりは鎖に結び付けられていた手斧だった。
華奢なチドリが信じられないほど豪快に鎖を振り回し、はじかれた斧は大きく旋回して彼女の手に戻っていく。
「こちらに友好的ではないようです。」
チドリの前に立ちはだかったアイギスは、そう告げるとガシャリと機銃に装填する音を立てた。
「待ってくれアイギス。」
順平が慌てたように声を上げる。
「お前は下がってろ。どっちみちこの状況じゃ戦うしかない。あいつを取り押さえて化けの皮を剥いでやるんだ。」
暴れる順平を抑え込みながら真田さんが声を荒げる。
その場に、新たに聞き覚えのある男の声が響いて来た。
「ほう。あいかわらず威勢だけはいいな。」
どこから現れたのか、黒ずんだ空間の奥から、赤いコートを纏った長身の男が姿を見せた。
「取り押さえられるってんなら、この俺のことも取り押さえてみやがれ。」
私は衝撃で息をのみ、思わず目を見張った。
「荒垣さん!」
天田君が驚きの声を上げる。
「シンジ・・・」
真田さんもそう声を漏らして、順平をかかえたまま硬直した。
特別課外活動部の一員で真田さんの幼いころからの親友。天田君をかばって亡くなった大切な仲間。そして・・・私にとってもかけがえのない人。
その人が今、私たちの前に立ちはだかっている。
「どういうこと。」
ゆかり が動揺して振りかえる。私は自分の心を抑えて、ただ首を横に振った。
もし先にチドリを見ていなければ、私も順平のように思わず駆け寄ろうとしていたかもしれない。しかし、今の荒垣さんの姿には不吉なものしか感じられなかった。
「荒垣も病院で死亡が確認されている。・・・荒垣のはずがない。ニセモノだ。」
美鶴さんが苦しそうに言葉を吐き出した。
「そうかい。ニセモノか・・・。お前らは俺のことを否定するんだな。」
荒垣さんがせせら笑うように言う。
「こんな状況下で死んだ人間が現れて、信じられるわけがないだろう。」
美鶴さんが語気を荒くして応えた。
「それでは、この私はどうだ。」
続けて荒垣の背後から、さらにもう一人現れた。
今度は片目に眼帯をしたスーツ姿の中年の男。
「お・・・お父様!」
気づいた美鶴さんが思わず上ずった声を上げる。
だが、気持ちを抑え込むように
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