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ペルソナ3 異界の虚影
前編
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丈夫です。」
少し心配そうな真田さんに、私は笑顔で返した。
「そうか。」
真田さんもつられたように笑みを浮かべる。
「心配してくれてるんですよね。ありがとうございます。」
「いや・・俺は別に・・・。」
顔を赤らめて口ごもる。その率直で不器用な気遣い方が、私には好ましかった。
その時、前方から天田君が声をかけてきた。
「真田さん、寮ですよ!!」
私はどことなくその呼びかけ方に棘がある気がした。
「ああ、分かってる。いよいよ本番だな。」
真田さんはその場をごまかすような口調で応えると、足を早めて再び先頭に立った。

月光館学園巌戸台寮。
私たちの住まいであり、特別課外活動部の本拠地でもある。
と言っても、ここは現実世界ではない。どれだけそっくりに見えてもここは異界なのだ。
ここでいったい何がおきているというのか。その古風な外観はいつもと何も変わらないように見える。
ただし、その入口の前には、道をふさぐかのように3体のシャドウがたむろしていた。
私たちに気づいた3体は、すかさずこちらに向かって迫って来る。
前衛にいたアイギスが、それに向けて機銃を掃射した。
「カエサル!」
「アルテミシア!」
「タナトス!」
同時にペルソナを呼ぶ声が夜空に響き渡る。3体のシャドウはたちまち撃破され、黒いチリとなって消えた。
「よし突入するぞ」
振り向いた美鶴さんが高らかに宣言し、すかさず真田さんが学生寮のドアを開くと、先頭を切って足を踏み入れた。
先輩たちに続いて中に入ると、寮のロビーであるはずの場所はがらんと広くなっており、焼けただれたようにくすんで黒く変色している。
その場所の広さや天井の高さは、本来の建物内部を大きく上回っている。外観はいつも通りだったのに、その中は異様な空間と化していた。
しかし位置関係は寮のロビーと同じらしく、正面奥に2階に上がる階段が見えている。
そして階段の手前には白い人影があった。
黒く薄汚れた空間の中にあって、その姿は浮き上がるように白い。それは純白のドレスを身に着けた華奢な少女だった。
うつむいていた少女が、ゆっくりと顔を上げる。
その場の空気が凍り付いた。
「チドリ・・・」
順平が呻くように声を漏らす。
かつて順平が思いを寄せ、死にかけた順平に命を与えてその身を犠牲にした少女、チドリ。そのチドリが、私たちを待ち受けていたかのように佇んでいる。
「ここから先には行かせない・・・。」
チドリはまったく感情のこもらない冷たい声で、私たちに告げた。全員が呆然と見守る中、彼女はゆっくりと前に足を進めてくる。
「チドリ・・なんで・・・」
順平が思わず駆け寄ろうと前に出る。その肩をがっしりつかんで押しとどめると、真田さんが大声で叱咤した。
「待て順平。あれがチドリのわけがないだろ
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