第七十三話 標
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ゴールドオーブの行方がどうなったのかは判明した。
しかし場の空気は静寂に包まれてる。
今しがた展開されたアベルの壮絶な過去に圧倒され、誰も口を開くことができなくなっていた。
「……ゴールドオーブは破壊されていました。何か手段などはありますでしょうか?」
しかしその静寂を他ならぬアベル本人が打ち破る。
「えっ。ええっと、そうですね」
しどろもどろになりながら、努めてプサンは平静を装っていた。
「ゴールドオーブとシルバーオーブは数千年も前にある妖精の女王から賜ったものなのです。彼女に協力を求められれば、きっと新しいものを授けてくれるでしょう」
話が変わったことで、先程までの重くなっていた空気はいくぶんか和らいでいた。
しかし真っ青な顔になったレックスとタバサの顔を見ると、あの光景は未だにこの場にいる全員に焼き付いてしまっている。
「妖精の女王はどこにいるかわかりますか?」
「彼女は人間界とも妖精郷とも隔絶された空間に居を構えています。そこに通じる道は妖精郷の長のみが知っているでしょう」
プサンは目を閉じて小声で何やらぶつぶつと唱え始めた。
しばらく何をしているのかはわからなかったが、アベルの腰元に括りつけられた地図が淡い虹色の光を放っていることに気づく。
「妖精郷へと至る路がある場所の標を地図に現わしておきました」
「ここは……サラボナの近くか」
横から地図を覗き込むと、サラボナの近くの一点に虹色の炎が揺らめきながら灯っている。
「私はここに残って天空城の管理をしています。どうか皆さん、ゴールドオーブをよろしくお願いします」
「……お父さん、大丈夫?」
プサンの力で天空城から戻った後。
今まで口を開かなかったレックスが真っ先に口を開いた。おそるおそる慎重に。
「泣いて、いいんだよ」
「レックス…………」
「辛いときは泣いていいと、私も思います」
タバサも兄に続いて口を開く。
少しの間アベルは唇を固く結んでいたけれど、それを優しく緩めた。
「ありがとう二人とも。でも大丈夫。もう辛くはないよ」
ポンと。
レックスとタバサの頭を撫でる。
「本当に大丈夫なの?」
「平気、なんですか?」
「そう言ってくれるだけで嬉しいよ」
柔らかな笑みをアベルは我が子に向ける。何かを覆い隠すように。
ルーラでグランバニアに帰還する。
冒険が一区切りついた後のいつもの流れだ。
「……泣かなくてよかったの?」
その流れの途中で私はアベルにたずねた。
私達に気を遣っていたのはわかる。
だとしてもレックスとタバサに聞かれるまでパパスさんのことを口に出さず、口に出させようとしなかった。
それだけじゃなく、天空城を出た後もしばらくは足が止まってもいいはずなのに目的地ま
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