第一章
[2]次話
従姉は頼りになる
相良沙織は相良光弘の従姉である、だが二人を見て彼等のことをよく知らない人達はこう言うのが常だった。
「仲いいよな」
「まさに姉弟」
「相良はいいお姉さん持ったな」
「奇麗で優しくて」
「いいお姉さんだな」
「いや、僕姉さんいないから」
光弘はいつもこう返した、細い眉にやや切れ長の大きな目に黒い短い髪で背は一七〇程の背ですらりとしている。髪の毛の上の部分が立っていて所謂アホ毛の様である。青い詰襟の制服は通っている八条学園高等部の制服の一つである。
「沙織さん姉じゃないよ」
「えっ、名字同じだけれど」
「違うの？」
「それなのに」
「名字が一緒なのに」
「住んでいる家も違うから」
光弘はいつもこのことも言った。
「僕は神戸市、沙織さんは姫路市だから」
「そうだったんだな」
「名字一緒だし仲いいから」
「お姉さんと思っていたら」
「違うのね」
「よく言われるけれど」
光弘自身こう言った。
「実はなんだよ」
「お姉さんじゃないか」
「じゃあ何？」
「親戚？」
「従姉なんだ。親父の妹さんの子供なんだ」
沙織はそうだというのだ。
「僕より一つ上に生まれたから。子供の頃からよく一緒にいたけれど」
「それでもか」
「姉弟じゃない」
「そのことは事実なのね」
「そうだよ、このことはね」
是非にと言うのだった。
「覚えておいてね」
「そうだったんだな」
「何かと思ったら」
「姉弟じゃなかったのね」
「確かに僕にとってお姉さんみたいだけれど」
このことは事実でもというのだ。
「姉さんじゃないことは言っておくよ」
「ただね」
「ただ？」
「ただっていうと」
「お姉さんみたいな人でね」
それでというのだ。
「色々と助けてもらってるよ」
「それで仲がいい」
「そんな人か」
「そうなのね」
「そのことは事実だよ」
こう自分達のことをよく知らない人に話した、兎角だった。
光弘は沙織との関係ではよく彼女を自分の姉だと間違えられた、そしてそのことをよく沙織にも言ったが。
沙織は笑ってだ、こう言うばかりだった。
「いいじゃないか」
「いいの？」
「そうだ、私は構わない」
微笑んで言うのだった。背は一六四程で黒く細い質の髪の毛を長く伸ばし後ろの一部を束ねている。細い眉に切れ長の二重のしっかりとした目で唇は真一文字の紅色だ。すらりとしたスタイルで制服は緑のロングスカートと白のブラウスと丈の短いスカートと同じ色のブラウスと青のネクタイといったものだ。
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