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空想オリジナル
第四章

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 ミニョンはそのまま自分の頭の中に浮かんだものを描いていった、それは実に不思議な絵だが。
 その絵を観てだ、多くの者は言った。
「これは独創的だ」
「他の誰にも描けない世界だ」
「こんな芸術ははじめて見た」
「シュールリアリズムの中でも別格だ」
「タッチも色使いもだ」
「これはいい絵だ」
「実にいい絵だ」
 芸術的に高い評価を得てだった。
 絵は売れ大学を卒業すると彼はフランスを代表する画家の一人になった。そうして多くの絵を描いていったが。
 風景画だけでなくそうした絵を描いていった、それで友人達に話した。
「皆にも教授にも言ってもらったよ」
「芸術は誰にも縛られない」
「自分の感性やセンスに従え」
「自分の中にあるものを描け」
「そうすればいいとか」
「最初何でそうした風景や生きものが思い浮かぶかわからなかったんだ」
 ミニョン自身もというのだ。
「けれどそれはいいことで」
「それを表現する」
「それが芸術である」
「そのことを受け入れて表現した」
「それがいい」
「そのことがわかって」
 そしてというのだ。
「描いていってよかった」
「そう言うんだね」
「君にしてもだね」
「その考えに至った」
「そういうことか」
「とてもね、よかったよ」
 非常にというのだ。
「お陰で今こうして描ける、芸術は縛られるものじゃない」
「その人の中にあるものだよ」
「それを表現すればいいものだ」
「その感性やセンスを」
「それが芸術だよ」
「全くだね、では僕はこれからも」
 ミニョンは友人達と酒場で飲みながら話をした、ワインをごくごくという感じで実に美味そうに飲んでいる。
「自分の中に浮かんだものを描いていくよ」
「そうすればいい」
「僕達に止める権利は一切ないよ」
「他の誰にも」
「そのまま描いていけばいい」
「君の中にあるものを」
「そうしていくよ」
 ミニョンは友人達に答えた、そしてだった。
 実際にそれからも描いていった、その幻想的な絵は世界にも知られ彼はこの世を去るまでそうした絵を描いていった。だが彼は言うのだった。
「自分の中にあるものを描いているだけだよ」
「それだけですか」
「その不思議な絵達は」
「そうなのですか」
「そうだよ、あくまでそれだけだよ」
 こう言うだけだった、彼はただひたすら己の中にあるものを描いていった。それが幻想的ともオリジナルとも言われてもだった。自分の中にあるものとしか言わなかった。まさにそれが芸術と思うからこそ。


空想オリジナル   完


                    2021・3・11
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