第二章
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友人達はまだ色のないその絵を観て誰もが唸った、そうして言った。
「これはまた」
「随分と変わった絵だね」
「地面と空が逆さまじゃないか」
「それに見たことのない魚もいる」
「しかも木の形が実に歪だ」
「裸の男女がその中で踊っている様だが」
「不思議な世界だな」
そのスケッチを観て言うのだった。
「何だこの絵は」
「シュールリアリズムかい?」
「この世じゃないな」
「別の世界だな」
「少なくともここにある世界じゃない」
「他にもこんなものが思い浮かんだんだ」
今度は恐竜が海にいた、しかし。
その恐竜は頭が四つありかつ海から空に高く跳んでいた、そして海の中には奇妙な形の珊瑚やヒトデがあった。アノマロカリスもいる。
他の絵もあった、天空に浮かぶ日本の城塞に銃ではなく花を持ちそれを手に子供達と笑顔で話すいかつい兵隊達にそのうえを賑やかに舞う裸の天使達が一緒にいる絵に。
ベートーベンがピアノを弾きつつ宇宙の中にいてそこで大好物のマカロニを見てうっとりとしているがそのマカロニの穴からはこれまた彼の好きなコーヒーの豆が出ている。
そうしたスケッチが次々に出た、ミニョンはその絵達を友人達に見せてからどうかという顔で言った。
「どう思うかな」
「いや、これは凄いね」
「シュールリアリズムにしてもね」
「また凄いね」
「また別の世界だよ」
「まさにそうだよ」
「そうした世界だよ」
「頭の中に浮かんでくるんだ」
こうした風景、世界がというのだ。
「どうも」
「それが君の感性だね」
「そしてセンスだね」
「悪くないよ」
「というか独特だね」
「これは面白いよ」
「描いたらいいよ」
「こうしたものが次々に頭の中に思い浮かぶから」
それでとだ、ミニョンはどうかという顔のまま話した。
「僕は頭がおかしくなったのかとね、お酒も薬もやっていないのに」
「逆にどちらもしていなくてこのセンスは凄い」
「素晴らしいよ」
「後はこの絵をキャンバスに描けばいい」
「それも君が思うタッチと色使いで」
「僕達が言うことじゃない」
「全ては君の思うままだ」
友人達はミニョンを一切止めなかった。
「こんな絵を描くななんて誰が言うんだい」
「言う筈がないじゃないか」
「だからどんどん描くんだ」
「もう君が望むままに」
「ここでもそう言うんだね、確かに我が国にそんな法律はないし教会も言わない」
誰かに止められることはない、ミニョンも自覚した。
「それなら」
「そうだ、描くんだ」
「思ったこと、頭の中に浮かんだものを描くんだ」
「それが芸術なのだから」
「大事なのは君がどうかだ」
「君が描くことだ」
こう言ってだった。
友人達はミニョンを止めなかった、私生活なら兎も角芸術で
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