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渦巻く滄海 紅き空 【下】
五十一 不死コンビVS宿敵コンビ
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クラ刀も回避できた。
大木の幹を駆け上り、影に注意を向けていた飛段は、やがて自らの勝利を確信した。
三刃の鎌で、大木の幹に一線、傷をつける。


「どうやら此処までが、てめぇの影の限界範囲のようだなァ」

シカマルの細く細く伸ばされた影が、三刃の鎌の傷よりも先へ動かない。
影の活動限界を知って、飛段はニヤリ、とシカマルを見下ろした。


「術を使うことは出来るようだが、この曇り空じゃ、いつもより力が出ないってか?」

苦々しげに歯噛みするシカマルを見下ろした後、角都は天を仰ぎ、神への祈りを捧げた。


「これも邪神様のお導きってヤツかねぇ…天は俺らに味方したな」













「…流石鬼人は一筋縄じゃいかんな」
「そりゃどうも」

先ほど、足首を掴んで的にした再不斬は水分身。
風遁の攻撃を直撃したはずの再不斬はすぐさま水と化し、カカシが首切り包丁を奪還する。

カカシから受け取った首切り包丁を振るう再不斬の猛攻。
飛段がシカマルの影に追われている一方、角都は再不斬とカカシを相手に防戦していた。

とは言うものの、実質、三対二だ。角都に従う能面の化け物二体。
それらから攻撃を仕掛けつつ、角都は再不斬が放つ首切り包丁の斬撃を、硬化した腕で受け止めた。


「馬鹿の一つ覚えか…俺に物理攻撃は効かないと言っただろう」
「ああ、そうかい。物覚えが悪いんでね──【水遁・水龍弾の術】!」


首切り包丁の影で印を結んだ再不斬。
その背後から巨大な水の龍が生まれゆく。


「同じ手を二度受けると思うか…ッ!?」

至近距離からの水遁を受け、角都の身体が宙に舞う。
しかし、先日も先ほども再不斬はこの術を何度も使っている。
故に威力の程を知っている角都は一瞬、気を緩めた。

しかしそれが命取りだった。




「ぬお…!?」
「同じ手かどうか、てめぇの身体に聞いてみな!」

予想以上の水遁の威力に、角都が怯む。再不斬の足元の水が減っている事に気づいて、「そうか…!」と得心がいったように、歯軋りした。

「この為に、先ほどの術でこの場一帯を水浸しにしたのか…!」

湖と化した足元の水をも巻き込んでの水龍。
【水遁・大瀑布の術】で生み出した多大な水を含んだ龍は更に激しさを増して、角都に襲い掛かる。

「ならば術者を叩けばいい話だ…鬼退治といこう」


角都の目線が再不斬を射抜く。
二体の化け物が一気に再不斬目掛けて飛び掛かろうとしたその瞬間、チッチッチッチと鳥の鳴き声がした。

怪訝な表情を浮かべるのも束の間、角都は己へ迫りくる水龍を見る。
その中にいるはずもない敵影を認め、角都の顔が驚きに満ちた。




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