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渦巻く滄海 紅き空 【下】
五十一 不死コンビVS宿敵コンビ
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(曇ってきやがった…)


天は敵に味方した。
曇りゆく空を仰ぎ見たシカマルはそう思わざるを得なかった。

あれだけ晴れていた空が徐々に陰ってゆく。
光あるところに影あり。即ち、光がないと影はできない。

影を伸ばしたり縮めたり、形を変えるには限界がある。
自分の影の表面積分しか自在に操れないが、それは他の物体の影とくっつけて更に伸ばすことが可能だ。

しかし、空が曇り、影が薄くなっている現状では【影真似の術】で相手を拘束する力及び伸ばす距離が、晴天よりも遥かに劣ることとなる。

曇天を苦々しげに見上げたシカマルは、目の前に立ち塞がる敵を油断なく見据えた。
飛段と角都。不死コンビを前に、目まぐるしく頭を回転させる。

空も戦況も雲行きは怪しい。
けれど、己が出来うる最善策を取らねばならない。



「…チョウジ。お前はいのの許へ行け」

指示を飛ばす。
いのは【心転身の術】で飛段の身体を乗っ取っていたが、角都からの攻撃を受け、その反動で気を失ってしまった。
飛段が不死身であることを利用し、容赦なく攻撃した角都は、現在いのの存在を知らないが、気絶している彼女を人質にでもされたら元も子もない。


「わ、わかった…!いのが目を覚ましたらすぐに戻ってくるよ」

気を失っているいのを安全な場所へ連れて行き、人質にされる危惧を考え、彼女を護衛する。
それが今の自分にできる役割だと、チョウジはシカマルの物言いから悟った。
小声でシカマルに了承を返し、踵を返す。


「おいおい。援軍でも呼びに行くつもりかよ」
「構わん。何人来ようが心臓のストックが増えるだけだ」

立ち去るチョウジをあえて見逃す角都と飛段の背後で、再不斬が首切り包丁を振り被る。


「その余裕がどこまで続くか見ものだな…!」

一瞬で相手の背後を取った鬼人の得物が光る。
角都の胴体を真っ二つにしようとした首切り包丁はしかし、ガキンという鈍い音だけにとどまった。


「相変わらず、かってぇな…!」

【土遁・土矛】。皮膚を硬化させ、攻撃力と防御力を劇的に上昇させる角都自身の術だ。

その効果のほどは、首切り包丁の鋭利な攻撃を鈍い音だけで済ませていることからも窺える。
角都の肩にとどまったまま、どれだけ力を込めようとも動こうとしない得物に、再不斬はチッ、と舌打ちした。


「俺にはどんな物理攻撃も通じないと前回学んだはずだが?霧隠れの鬼人」

以前、初対面で戦った際、首切り包丁の猛攻を受けきった角都が呆れ声を上げる隣で、飛段がにや、と口角を吊り上げた。

「斬り損なって残念だったなァ!代わりに斬ってやんぜ!!」


相方を斬れず仕舞いに終わった再不斬目掛け、鎌を振るう。
そのまま血を
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