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犬は苦手だったけれど
第四章
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「クゥ〜〜ン」
「よしよし」
 秋田犬はすぐにだ、昭に懐いて。
 尻尾を振って顔を摺り寄せてきた、ここに犬の飼い主と思われる力士の様な大柄な初老の男の人が駆けてきた。
「ここにいたか」
「この子の飼い主ですか」
「リードが急に外れて駆けていって」
 飼い主は昭に大型犬用のリードを出して話した。
「何処に行ったかと思ったら」
「そうでしたか」
「何もしませんでしたか、こいつ」
「はい、大丈夫です」
 昭は飼い主に微笑んで答えた。
「何もなかったです」
「それならよかったです、それじゃあ」
 飼い主は秋田犬の頭を撫でた、そしてだった。
 犬にリードを付けてそうして二人に深々と頭を下げて礼を述べた、そのうえで犬を連れて去って行った。
 飼い主と犬が去るとだった、葵は昭に話した。
「有り難うございます」
「いえ、俺は何も」
「そうですか?」
「ただ犬に好かれるだけなんで」
「ですが犬に好かれて」
 それでとだ、葵は昭に話した。
「皆助かりました」
「そうですか」
「ですから」
「俺がいたからですか」
「助かりました、ポメ乃介もそう言っています」
「へっへっへ」
 見ればここでだった。
 ポメ乃介も彼を見上げて尻尾をぱたぱた振っていた、その彼を見るとだった。
 昭は自然と笑顔になった、そしてこの時から。
 彼は葵と正式に付き合う様になりかつ犬に対しても嫌いでなくなった、というよりかは。
「犬好きになったか」
「ああ」
 昭は友人に大学の食堂の一つで一緒にカレーを食べつつ話した。
「今はな」
「そうなんだな」
「犬に好かれるお陰で助かったしな」
「あの人と付き合える様になったしか」
「それでポメ乃介には相変わらず懐かれてるし」
 このこともあってというのだ。
「それでな」
「そうか、よかったな」
「ああ、苦手だったのにな」
「けれど好かれていてか」
「どうにもっておもっていたからな」
「犬はその人間がわかるっていうだろ」
 友人はカレーを食べつつ言った。
「だからな」
「俺のこともか」
「わかってるんだ、お前がいい奴だからな」
「それでか」
「懐いていたしな」
「今もか」
「そういうことだろ、だからな」
 こう彼に言うのだった。
「これからもな」
「犬に懐かれてか」
「いいと思うんだな」
「これかはそうするな」
 昭もカレーを食べた、そうしながら友人に答えた。
「犬好きになったしな」
「ああ、それじゃあな」
「そうなる様にしていくな」
 友人に笑顔で言った、そして学校の講義が終わるとこの日はアルバイトに行った。だが家に帰ってから葵が送ってくれたポメ乃介の動画を観て笑顔になった。


犬は苦手だったけれど   完


      
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