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犬は苦手だったけれど
第二章

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「ポメ乃介、そこにいたのね」
「ワンワン」
 犬は名前を呼ばれるとだった。
 すぐに姿勢を戻して女性のところに戻って抱き上げられた、そして。
 女性は昭に向き直って笑顔で礼を述べた。
「有り難うございます、保護してくれたんですね」
「いえ、俺は何も」 
 昭は女性に正直に答えた。
「していないです」
「そうですか?」
「ええ、ですから」 
 それでというのだ。
「お礼は別に」
「いえ、若しこの子が立ち止まらなかったら」
「ヘッヘッヘ」
 舌を出しているその犬を見ながら話した。
「私ではとても」
「そうですか」
「この子素早いですから」
「犬ですからね」
「その中でも特になんです」
 抱いているそのもふもふのポメラニアンを見つつ話した。
「足が速いんです」
「そうなんですか」
「ですから私では」
 追い付けなかったというのだ。
「それを有り難うございます」
「そうですか」
「はい、ただ」
「ただといいますと」
「この子雄で」 
 それでというのだ。
「そのせいか気が強いところがあって私以外には懐かないんです」
「そうした子ですか」
「噛みはしないですがよく吠えて」
 そうしてというのだ。
「お散歩の時結構大変なんです」
「そうした子なのにですか」
「初対面の人にこんなに懐くなんて」
 こう昭に言うのだった。
「なかったんですが」
「そうなんですか」
「私今八条大学の一回生で」
「俺もですよ」
「そうなんですか」
「ええ、社会学部の」
「私は文学部ですが」
 自分達のそれぞれの学部の話もした。
「同じ大学だったんですね」
「そうですね、俺島崎昭っていいます」
「木下葵といいます」
 ここでお互いに名乗った。
「実家は和歌山で今はペット可のマンションにこの子と一緒にいます」
「一人と一匹で、ですか」
「暮らしています」
「そうですか」
「はい、それで」
 そのうえでというのだ。
「ポメ乃介と仲良く暮らしてるんですが」
「この子は木下さん以外にはですか」
「家族にも懐かなくて」
「そうなんですか」
「そんな子なのに」
 その彼がというのだ。
「懐くのは凄いです」
「そうですか」
「余程犬に好かれるんですね」
「まあ俺実は」
「実は?」
「あっ、何でもないです」
 犬嫌いなのは隠した、初対面でいきなり好感を下げるのはよくないと思って本能的にそうした。そのうえで葵に話した。
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